スポーツ PositiveNegativeRelationshipArguments


2018.09.15 小宮良之●文

スペインの名伯楽が森保Jを祝福。
「日本人の特長が最大限出ていた」



「ロシアW杯のベルギー戦の落胆は、今も消えずに残っている。日本の選手たちが見せたパフォーマンスは賞賛に値した。その後、新たに森保一監督が就任、新体制となった。コスタリカ戦で選んだ選手は新顔が多く、文字通り、新チームとしてみるべきだ」

 森保一監督の初陣となったコスタリカ戦。”スペインの名伯楽”ミケル・エチャリは冷静なトーンでリポートを書き出している。

 エチャリはスペイン、バスク地方でレアル・ソシエダ、エイバル、アラベスなど有力クラブで強化部長、育成部長、監督、戦略分析担当、スカウトなどの要職を、数十年にわたって歴任してきた。現在はバスク代表監督(FIFA未公認)の肩書きを持っている。今や指導者として活躍するウナイ・エメリ(アーセナル監督)、ホセバ・エチェベリア(テネリフェ監督)、シャビ・アロンソ(レアル・マドリードU-14監督)などに強い影響を与えてきた人物だ。


「個人的な意見としては、好ましい戦い方だった」

 森保ジャパンのコスタリカ戦の船出を、エチャリは最初にそう評価した。

「新たにチームを率いることになった森保監督は、4-2-3-1の布陣を選択している。4-4-2とも言えるが、小林悠(川崎フロンターレ)がトップで南野拓実(ザルツブルク)はその後ろという形で、3-4-2-1とも5-4-1とも言えるコスタリカと相対している。

 日本は試合の流れをつかんでスタートした。前線の中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野らが積極的にシュート。目を引いたのは、そのプレースピードだろう。速く精度の高いパス回しから敵陣に迫っている。

 しかし前半8分、最初に決定機を得たのはコスタリカだった。ロングボールをヘディングで競り勝って跳ね返すと、それを拾ったランダル・レアルが、佐々木翔(サンフレッチェ広島)のディフェンスをかわして右サイドに侵入。追いすがる佐々木を切り返して、左足で際どいシュートを浴びせている。

 もっとも、日本は主導権を失っていない。スキルの高い選手たちが、コンビネーションを使い、前線までボールを運んでいる。コスタリカの選手たちはそれをファウルでどうにか止めるしかない有様だった。
 
 そして前半16分だった。押し込んでいた日本は、中島が蹴った右CKをニアサイドで佐々木が頭で合わせる。これが敵ディフェンダーの頭をかすめ、オウンゴールで先制に成功している。

 その後はコスタリカが中盤を固めたことで、試合は膠着した。

 しかし前半38分には、日本は目を見張るコンビネーションを見せている。中盤での強度の高い攻防から、ボールを拾った遠藤航(シント・トロイデン)が絶好のボールを前線の小林に入れる。落としたボールを南野が右足ボレーで枠に飛ばした。ボールはGKに弾き出されたものの、縦に速い攻撃で好機を作り出し、高い連係度を示している。選手たちは、試合の流れに柔軟に対応できていた」

 後半に入ると、日本のプレーは加速して完全にコスタリカを凌駕することになった。

「日本は少ないタッチでボールを回し、インサイド、アウトサイドと攻め立てている。プレーテンポの速さは、単純なボールの動かし方だけではない。ボールを失った後のトランジション(攻守の切り替え)にも速さは出ていた。攻撃しながらも守備の準備ができており、”相手に虚を突かせない”という周到な戦い方を見せていたのだ。

 集中力が高く、リスタートも迅速。油断がなかった。ライン間の連絡機能も高く、有効なスペースを与えていない。

 たとえば敵陣でCKを取ると、得点を取るためのポジションばかり考えがちである。しかし攻撃しているときこそ、守備の準備をしなければならない。この日は、そういった戦術的原則が守られていた。CKの跳ね返りが相手に渡っても、その攻撃を封じ、遅らせる選手が配置されていた」

 後半21分、日本は南野が2点目を奪ってリードを広げている。

「コスタリカ戦の中島は、ビジョンの明晰さと判断のよさ、スキルの高さで際立っていた。2点目のシーンも、1本のパスで中央左サイドを破っている。走り込んだボランチの遠藤が、マイナス方向にパス。これを受けた南野が適切なコントロールから、左足でゴールを決めた。コンビネーションを使った素晴らしい得点で、この日、最高のプレーだったと言えるだろう。

 アディショナルタイムには、交代出場した伊東純也(柏レイソル)が右サイドを攻め上がり、1対1から中に切り返してマークを外し、左足のシュートを鮮やかに決めている」

 3-0の完勝。森保ジャパンの初陣はこれ以上ないものになった。

「コスタリカのプレーレベルが低かったことは、残念ながら否定できない。そこは差し引いて評価すべきだ」

 エチャリはそう断ったうえで、日本の船出をこう祝福している。

「日本のプレースピードは圧倒的だった。チームとして距離感などのバランスが崩れず、試合を通して選手同士が連係し、ラインもコンパクトに保っていた。攻撃でボールを失った後のリスク管理も徹底され、トランジションは及第点。なにより、日本人のプレーキャラクターであるスピードとテクニックを最大限に活用した試合だったと言える。今後の成長を見守りたい」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/15/post_62/




2018.09.16 小宮良之●文

スペインの慧眼が日本代表を個別評価。
真っ先に名指しした3人は?



「10番(中島翔哉/ポルティモネンセ)、8番(南野拓実/ザルツブルク)、そして6番(遠藤航/シント・トロイデン)。コスタリカ戦における彼ら3人のプレーは際立っていた。そしてチームとしてのディフェンスも非常によかった。素晴らしい勝利だ!」

“スペインの慧眼”ミケル・エチャリは、目についた選手の名前を挙げ、スカウティングリポートを書いている。

 2009年から日本代表をスカウティングしてきたエチャリは、日本人選手のキャラクターを知り尽くしている。岡田ジャパンではアンカー起用を”進言”し、ザックジャパンを賞賛しながらも攻撃偏重に警鐘を鳴らした。ハリルジャパンの戦術を評価しつつも、2017年に入ってからのレベルダウンを指摘。さらに西野ジャパンの3バックに難を示す一方、長谷部誠を中心にした戦術的熟成を見抜いていた。

「ロシアW杯のベルギー戦は誇り高い戦いぶりだった。しかし、あと3人、経験値の高い選手がいたら、ベスト8進出に手が届いたかもしれない」

 ロシアW杯終戦直後、そう総括していたエチャリは、新たに発足した森保ジャパンの選手たちの実力をどのように見たのか――。3人の名前を挙げ、その所見を綴っている。


中島翔哉

「途中交代するまで、クオリティの高いプレーを続けた。明晰なプレービジョン、判断力、高いパス&コントロール技術の持ち主だ。ボールを持つたびに、敵の脅威になっている。日本の2点目では、相手の裏をかく角度、タイミングでのパスにより、コンビネーションプレーの起点になった。

 また、先制点を演出したように、セットプレーのキックの質も高い。キックそのものに自信を持ち、切り返しからのクロスを南野の頭にぴたりと合わせている。左サイドで、日本の高速プレーの中心になった」


南野拓実

「前線の一角で、シュートを数多く打っていた。連係度の高さが光った。2点目はまさに象徴的。エリア内で中島のパスを呼び込む動きをしながら、ディフェンスを引きつけた後、左サイドでフリーになった遠藤に出されたボールに対し、ディフェンスラインの前で止まってボールを受け、左足で流し込んでいる。

 コンビネーションを使って生きるタイプだろう。前半、遠藤が入れたロングボールを、小林悠(川崎フロンターレ)が落としたところで放ったハーフボレーも際どかった」


遠藤航

「中盤で、青山敏弘(サンフレッチェ広島)とパートナーを組んでいた。チームはトランジション(攻守の切り替え)で質の高さを見せ、ラインもコンパクトさを保っていたが、遠藤は中盤で常にそのバランスを取っていた。

 小林に入れるロングボールは、まさに攻守一体。また、2点目は自らボールを持ち運び、中島に預けてから左サイドを駆け抜けている。コスタリカの攻撃力が乏しかったのはあるにせよ、効果的なプレーが多かった」


「日本の選手たちはおしなべて、レベルの高いプレーを見せた」

 エチャリはそう言って、他の選手たちにも及第点を与えている。


「後半に関しては、ほとんどワンサイドゲームだった。そのなかで特筆すべきは、ディフェンスの意識にあるだろう。攻撃をしながらも、常に守備のタスクとポジションを忘れず、危険を未然に防げていた。その安定によって、円滑な攻撃を続けられたのだ。ディフェンスに関しては、個人よりもチームとしての出来を賞賛すべきだろう。

 そのなかで、右サイドバックの室屋成(FC東京)は興味深いプレーをしている。2度にわたって、危険な攻め上がりを見せた。深いところまで進入できており、適切なタイミングでの攻撃参加だった。
 
 堂安律(フローニンゲン)も攻撃センスを見せつけていた。左利きのアタッカーで、右サイドからダイアゴナルにゴールに向かうプレーを好み、その感覚に優れている。インサイドに入ってパスを受け、GKとの1対1から左足でシュートを放った場面は、結果的にセービングされたが、いいプレーだった。また、自らボールを持ち運び、中に切り込んでのシュートはポストをかすめている。

 終盤は多くの交代選手を投入した。伊東純也(柏レイソル)は右サイドでボールを持ち運び、1対1を制して、切り返しから個人技でゴールを決めている。目覚ましいスピードとテクニックだった。ただし、コスタリカのディフェンダーは完全に追い詰めていただけに、なぜ間合いを詰めなかったのか、疑問が残る」


 エチャリは日本の可能性に明るい展望を示しながら、最後にこう締め括っている。

「日本人は一瞬の速さや献身性、さらにボールスキルに優れている。それをコンビネーションで活かせるか。そして、攻撃しているときには守備の準備をする”攻守一体”を身につけられたら、今後、さらなる成長が望めるはずだ」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/16/post_63/





2018.09.14 中山淳●取材・文

初陣勝利も森保監督の過大評価は禁物。
コスタリカ戦を冷静に細かく分析



 3-0で勝利したこともあってか、森保ジャパンの初陣となったコスタリカ戦に対する世間の評価はすこぶる高い。とりわけ試合を観た者にとっては、苦戦を強いられた前半よりも、ロシアW杯に出場していないフレッシュな選手たちが躍動した後半のイメージが強く残ってしまうため、うっかりすると過大評価につながってしまう可能性がある。

 そこで、客観的な視点であらためて試合をレビューし、ディティールから見えてきたものから、森保ジャパンのサッカーを分析、評価したい。そうすることで、コスタリカ戦で見せた日本の狙いと、それをどこまで実行できたのかが明確になるからだ。


 まず、この試合の日本をひと言で総括すれば、前半と後半では別の顔を見せたということが挙げられるだろう。

 ただし、前後半の内容の違いは、選手交代枠が通常より多く、それぞれの目的意識が異なる親善試合の特性でもあるため、主に外的要因によるところが大きいという大前提を頭に入れておく必要がある。

 たとえば、今回で言えば、日本は4日前に予定されていた札幌でのチリ戦が地震の影響でキャンセルされたこと、それによって練習時間と内容などスケジュールの修正を余儀なくされたという背景があった。また、コスタリカ戦が森保監督にとっての大事な初陣だったということも試合に大きく影響を与えた。

 逆に、コスタリカは4日前にアウェーで韓国戦を戦っていた。試合後の会見でロナルド・ゴンサレス監督も語っていたが、この試合のコスタリカは、移動を含めて日本よりもコンディションでハンデを負っていたこともおさえておくべきだろう。そして、今回の試合の目的のひとつとして、今後はコスタリカ伝統の3バック(5バック)だけでなく、4バックも併用できるようにトライをしている最中であったこともポイントとなった。

 これらの背景を踏まえ、両監督がこの試合で採用する布陣を決定したことが想像できる。準備不足の日本は、森保監督のトレードマークである3-4-2-1ではなく、現代サッカーの基本ベースとなっているオーソドックスな4-4-2。一方のコスタリカは、韓国戦で4バックをテストし、日本戦ではコスタリカの選手が慣れ親しむ3-4-1-2を採用した。


 そんななかで迎えたこの試合は、立ち上がりこそ日本ペースで展開したが、8分の南野拓実(ザルツブルク)のシュートシーンの後から、コスタリカの前線からの守備が機能し始めた。そこには、2トップが日本のセンターバック2枚にプレッシャーをかけ、トップ下の22番(ランドール・リール)とボランチの20番(ダビド・グズマン)が青山敏弘(サンフレッチェ広島)と遠藤航(シント・トロイデン)に厳しく寄せて、日本のビルドアップの起点を潰してしまおうという狙いが垣間見えた。

 そこからしばらくは日本が苦戦する時間帯が続いたが、その中で浮き彫りになった現象は主に3つあった。

 ひとつは、ボランチの青山と遠藤が得意とする縦パスが影を潜めたこと。それでも2人は何度か縦パスを狙ったが、たとえば14分の青山から南野へのくさびはカットされ、26分の遠藤の小林悠(川崎フロンターレ)を狙った縦パスはオフサイドに、また27分の青山の縦パスが相手に渡ってしまうなど、2人が起点となることはほとんどできない状態に陥った。

 2つ目は、ボランチが機能しないために、DFラインからのロングキックによってコスタリカのプレスを回避するシーンが増加したこと。そこにはDFライン4人の特徴も現れていて、左SBの佐々木翔(サンフレッチェ広島)と右CBの三浦弦太(ガンバ大阪)が安全な場所にパスすることでプレッシャーを逃れるため、主に左CB槙野智章(浦和レッズ)と右SBの室屋成(FC東京)がクリアに近いロングフィードを頻繁に蹴っている。ちなみに、GK東口順昭(ガンバ大阪)のロングキックも頻発していた。

 そして3つ目の現象が、ロングフィードが増えたことによって、両SBが攻め上がれない状態が続いたことだった。本来であれば、両サイドに2人を配置する布陣の日本は、1人しかいないコスタリカよりもサイドで優位な立場にあるはずなのだが、中盤を省略するために両SBが上がるタイミングが失われることになった。


 前半、日本の両SBが敵陣深い位置まで攻め上がってクロスを試みたのは、日本ペースだった立ち上がり7分の室屋のクロスが相手DFにブロックされてコーナーキックになったシーンと、同じく14分に室屋のクロスが相手GKにキャッチされたシーンのみ。佐々木に至っては、20分に中島翔哉(ポルティモネンセ)のスルーパスで好機を得たものの、相手が寄せてきたことですぐに中島に長いバックパスを戻してチャンスを無にしてしまった。

 また、日本の両サイドMFの中島と堂安律(フローニンゲン)がサイドに張って縦突破を図るタイプではないため、実質的に布陣は4-2-2-2に近い時間が多くなり、その結果、相手の両ウイングバックの位置取りも高くなった。これも、コスタリカの前線からのプレスがハマりやすくなった要因のひとつとなった。これでは、4-4-2を採用した狙いも台無しである。


 ただ、日本が救われたのは中島のドリブルだった。中盤を省略するなか、中島にボールを預けることができれば、数十メートルほどボールを運んで相手を剥がしてくれるため、相手の守備のオーガナイズを崩すことができる。前半に作った日本の多くのチャンスが中島のドリブル、あるいは堂安のキープ力によって生まれたのは単なる偶然ではなく、そこしか頼るところがない状態が続いたからだと見ることもできる。

 そんななか、前半に日本が作った2つのビッグチャンスは、縦にボールを蹴るスタイルではなく、パスをしっかりつないで相手を揺さぶってからシュートを狙ったシーンだった。

 ひとつは23分。青山が小林へ入れたくさびが収まらず、そのルーズボールを遠藤が拾ってからの展開だ。まず遠藤が室屋にボールを預け、右に流れた小林にパス。受けた小林が室屋に戻し、堂安を経由して再び小林がボールを受けると、中央でフリーの中島にパス。中島のシュートはバーを越えたが、それは日本がこの試合で初めて6本のパスをつないだシーンだった。

 もうひとつが38分のシーン。この場面は右サイドから青山が入れたクロスを相手DFが頭でクリアした後から始まった。セカンドボールを拾ったのは佐々木。そこから、中島、佐々木、遠藤、槙野、三浦とボールを回して最終ラインからのビルドアップが始まると、その後は青山、佐々木、遠藤とつなぎ、遠藤が南野に縦パス。南野が相手2人を引きつけて見事に反転して前を向くと、内に入ってきた堂安に預け、遠藤に戻す。

 このパス回しによって、前後に動かされたコスタリカ守備網中央に隙が生まれ、遠藤が小林に縦パスを入れると、小林が胸で落として、南野がダイレクトでシュート。惜しくもGKの好セーブに阻まれたが、13本ものパスをつなげた遅攻から、ビッグチャンスを作ることができていた。

 結局、前半はコスタリカのオウンゴールによる1点で終了したが、内容的にはほぼ互角だったと見ていいだろう。

 まずコスタリカは、狙いどおり前からの守備を遂行して日本を苦しめ、13分にはゴールチャンスも作った。逆に日本は縦に蹴ることで何とかそれを回避し、パスで相手を揺さぶってから2度のチャンスを作った。ボール支配率は日本が48%で、コスタリカが52%(最終的には49%対51%)。シュート本数は、日本が5本、コスタリカが4本(最終的には14本対6本)。


 1-0で迎えた後半は、開始からコスタリカが3人を入れ替えたので、典型的な親善試合の様相を呈した。従って、森保ジャパンの評価をするうえではほとんど参考外となってしまったことは否めない。

 コスタリカとしては、勝敗よりも今後につなげるテストを目的としていたためであり、逆にホームの日本は、「森保監督の初陣」を勝利で飾りたいという目的があったため、選手交代は68分まで行なっていない。両チームの試合に臨む目的が、後半の試合内容と最終スコアに大きく影響したと受け止められる理由である。

 しかも、後半のコスタリカは67分までに6人の交代枠を使い切り、2-0とされた直後の6人目の選手交代の後は布陣を4-4-2に変更。選手が大幅に代わり、さらにテストを兼ねた不慣れな4バックにしたことで、日本にとっては勝利を目指しやすい舞台が整ったというわけだ。

 コスタリカの守備網が崩れた状態が続いたことで、日本の攻撃は前半とは比較にならないほど機能した。それを象徴していたのが、両SBの位置取りが高くなったことであり、それによってパスコースが増えて中盤を省略する攻撃が激減したことだった。

 典型的だったのは、60分の堂安のシュートシーンだ。惜しくもGKの身体に当たり、DFにクリアされたその決定的チャンスは、GK東口のスローインから始まり、それを受けた佐々木から7本のパスをつないだ後に迎えたシーンだった。

 そして、66分に遠藤がルーズボールを拾ってから始まった南野のゴールも、パスアンドゴーを重ねてフィニッシュしたものであり、同じように中盤を作ってから手にしたチャンスは前半よりも圧倒的に増加している。

 また、佐々木と室屋の位置が高くなったことで、両サイドの攻防においても日本は優位に立ち、佐々木と中島、室屋と堂安のコンビネーションも大きく改善した。73分に室屋が相手ボックス内深いエリアまで走り込んでクロスを試みたシーンは、後半における日本のサイドでの優位性を証明するものだったと言えるだろう。


 とはいえ、これらは日本が自ら何かを修正して起こった変化というよりも、あくまでも相手の問題だと考えたほうが妥当だ。終了間際に伊東純也(柏レイソル)が決めた代表初ゴールも含め、そういった試合状況を加味したうえで、客観的に評価する必要がある。

 そういう意味では、この試合で高い評価を得た遠藤、堂安、南野についても、前半のパフォーマンスを基準にした方が論理的だ。この試合のMVP的活躍を見せた中島も、ベストメンバーの中に混じって欧州や南米のトップレベルのチームと対戦したわけではないので、太鼓判を押すわけにはいかない。

 それは森保采配についても同じだ。今回は準備時間が短かったので細部までは詰められなかったとは思うが、もし前半のような「中盤を省いて縦に蹴るサッカー」を目指していないのであれば、あの段階で選手に指示を出して何らかの修正を施す必要はあったはず。

 選手のアドリブ任せでチームづくりを行なうなら、「選手が持っている能力以上のものを引き出すこと」を求められる監督の存在価値はない。会見で何度か口にした「良い経験をさせていただいている」という意識だけで、日本のトップオブトップである代表監督を務めてもらっては困るのだ。

 もろ手を挙げて喜ぶのは時期尚早。10月の2試合で森保監督がどの布陣を採用し、コスタリカ戦で活躍した選手が同じようなパフォーマンスを見せられるかどうかに注視する必要がある。とりわけ10月16日に予定されているウルグアイ戦が、森保ジャパンの本当の試金石となりそうだ。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/14/post_61/




長くてすまん。



エチャリ氏のレポートを元にした前半2つの記事は、かなりポジティブに、

後半の記事は、ネガテイブと言うか、やや辛口に書かれている。



自分の感想としては、

前半に関しては確かに良くない時間帯もあったが、

最初の試合としてはそれほど悪くもなかったと思う。

後半の出来はとても良かったし、見ていて楽しかった。

しかし、やはりコスタリカのパフォーマンスが悪かったので

正しく判断するには時期尚早だろう。



10月の親善試合でどうなるかを見てみたいが、

次は若手を大量招集するかもしれないという記事もあるし、
  ↓
https://article.auone.jp/detail/1/6/11/103_11_r_20180912_1536737566056637

しばらくは様子見だろうか。


 


日本代表の対象的な評価記事


2018.09.15 小宮良之●文

スペインの名伯楽が森保Jを祝福。
「日本人の特長が最大限出ていた」



「ロシアW杯のベルギー戦の落胆は、今も消えずに残っている。日本の選手たちが見せたパフォーマンスは賞賛に値した。その後、新たに森保一監督が就任、新体制となった。コスタリカ戦で選んだ選手は新顔が多く、文字通り、新チームとしてみるべきだ」

 森保一監督の初陣となったコスタリカ戦。”スペインの名伯楽”ミケル・エチャリは冷静なトーンでリポートを書き出している。

 エチャリはスペイン、バスク地方でレアル・ソシエダ、エイバル、アラベスなど有力クラブで強化部長、育成部長、監督、戦略分析担当、スカウトなどの要職を、数十年にわたって歴任してきた。現在はバスク代表監督(FIFA未公認)の肩書きを持っている。今や指導者として活躍するウナイ・エメリ(アーセナル監督)、ホセバ・エチェベリア(テネリフェ監督)、シャビ・アロンソ(レアル・マドリードU-14監督)などに強い影響を与えてきた人物だ。


「個人的な意見としては、好ましい戦い方だった」

 森保ジャパンのコスタリカ戦の船出を、エチャリは最初にそう評価した。

「新たにチームを率いることになった森保監督は、4-2-3-1の布陣を選択している。4-4-2とも言えるが、小林悠(川崎フロンターレ)がトップで南野拓実(ザルツブルク)はその後ろという形で、3-4-2-1とも5-4-1とも言えるコスタリカと相対している。

 日本は試合の流れをつかんでスタートした。前線の中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野らが積極的にシュート。目を引いたのは、そのプレースピードだろう。速く精度の高いパス回しから敵陣に迫っている。

 しかし前半8分、最初に決定機を得たのはコスタリカだった。ロングボールをヘディングで競り勝って跳ね返すと、それを拾ったランダル・レアルが、佐々木翔(サンフレッチェ広島)のディフェンスをかわして右サイドに侵入。追いすがる佐々木を切り返して、左足で際どいシュートを浴びせている。

 もっとも、日本は主導権を失っていない。スキルの高い選手たちが、コンビネーションを使い、前線までボールを運んでいる。コスタリカの選手たちはそれをファウルでどうにか止めるしかない有様だった。
 
 そして前半16分だった。押し込んでいた日本は、中島が蹴った右CKをニアサイドで佐々木が頭で合わせる。これが敵ディフェンダーの頭をかすめ、オウンゴールで先制に成功している。

 その後はコスタリカが中盤を固めたことで、試合は膠着した。

 しかし前半38分には、日本は目を見張るコンビネーションを見せている。中盤での強度の高い攻防から、ボールを拾った遠藤航(シント・トロイデン)が絶好のボールを前線の小林に入れる。落としたボールを南野が右足ボレーで枠に飛ばした。ボールはGKに弾き出されたものの、縦に速い攻撃で好機を作り出し、高い連係度を示している。選手たちは、試合の流れに柔軟に対応できていた」

 後半に入ると、日本のプレーは加速して完全にコスタリカを凌駕することになった。

「日本は少ないタッチでボールを回し、インサイド、アウトサイドと攻め立てている。プレーテンポの速さは、単純なボールの動かし方だけではない。ボールを失った後のトランジション(攻守の切り替え)にも速さは出ていた。攻撃しながらも守備の準備ができており、”相手に虚を突かせない”という周到な戦い方を見せていたのだ。

 集中力が高く、リスタートも迅速。油断がなかった。ライン間の連絡機能も高く、有効なスペースを与えていない。

 たとえば敵陣でCKを取ると、得点を取るためのポジションばかり考えがちである。しかし攻撃しているときこそ、守備の準備をしなければならない。この日は、そういった戦術的原則が守られていた。CKの跳ね返りが相手に渡っても、その攻撃を封じ、遅らせる選手が配置されていた」

 後半21分、日本は南野が2点目を奪ってリードを広げている。

「コスタリカ戦の中島は、ビジョンの明晰さと判断のよさ、スキルの高さで際立っていた。2点目のシーンも、1本のパスで中央左サイドを破っている。走り込んだボランチの遠藤が、マイナス方向にパス。これを受けた南野が適切なコントロールから、左足でゴールを決めた。コンビネーションを使った素晴らしい得点で、この日、最高のプレーだったと言えるだろう。

 アディショナルタイムには、交代出場した伊東純也(柏レイソル)が右サイドを攻め上がり、1対1から中に切り返してマークを外し、左足のシュートを鮮やかに決めている」

 3-0の完勝。森保ジャパンの初陣はこれ以上ないものになった。

「コスタリカのプレーレベルが低かったことは、残念ながら否定できない。そこは差し引いて評価すべきだ」

 エチャリはそう断ったうえで、日本の船出をこう祝福している。

「日本のプレースピードは圧倒的だった。チームとして距離感などのバランスが崩れず、試合を通して選手同士が連係し、ラインもコンパクトに保っていた。攻撃でボールを失った後のリスク管理も徹底され、トランジションは及第点。なにより、日本人のプレーキャラクターであるスピードとテクニックを最大限に活用した試合だったと言える。今後の成長を見守りたい」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/15/post_62/




2018.09.16 小宮良之●文

スペインの慧眼が日本代表を個別評価。
真っ先に名指しした3人は?



「10番(中島翔哉/ポルティモネンセ)、8番(南野拓実/ザルツブルク)、そして6番(遠藤航/シント・トロイデン)。コスタリカ戦における彼ら3人のプレーは際立っていた。そしてチームとしてのディフェンスも非常によかった。素晴らしい勝利だ!」

“スペインの慧眼”ミケル・エチャリは、目についた選手の名前を挙げ、スカウティングリポートを書いている。

 2009年から日本代表をスカウティングしてきたエチャリは、日本人選手のキャラクターを知り尽くしている。岡田ジャパンではアンカー起用を”進言”し、ザックジャパンを賞賛しながらも攻撃偏重に警鐘を鳴らした。ハリルジャパンの戦術を評価しつつも、2017年に入ってからのレベルダウンを指摘。さらに西野ジャパンの3バックに難を示す一方、長谷部誠を中心にした戦術的熟成を見抜いていた。

「ロシアW杯のベルギー戦は誇り高い戦いぶりだった。しかし、あと3人、経験値の高い選手がいたら、ベスト8進出に手が届いたかもしれない」

 ロシアW杯終戦直後、そう総括していたエチャリは、新たに発足した森保ジャパンの選手たちの実力をどのように見たのか――。3人の名前を挙げ、その所見を綴っている。


中島翔哉

「途中交代するまで、クオリティの高いプレーを続けた。明晰なプレービジョン、判断力、高いパス&コントロール技術の持ち主だ。ボールを持つたびに、敵の脅威になっている。日本の2点目では、相手の裏をかく角度、タイミングでのパスにより、コンビネーションプレーの起点になった。

 また、先制点を演出したように、セットプレーのキックの質も高い。キックそのものに自信を持ち、切り返しからのクロスを南野の頭にぴたりと合わせている。左サイドで、日本の高速プレーの中心になった」


南野拓実

「前線の一角で、シュートを数多く打っていた。連係度の高さが光った。2点目はまさに象徴的。エリア内で中島のパスを呼び込む動きをしながら、ディフェンスを引きつけた後、左サイドでフリーになった遠藤に出されたボールに対し、ディフェンスラインの前で止まってボールを受け、左足で流し込んでいる。

 コンビネーションを使って生きるタイプだろう。前半、遠藤が入れたロングボールを、小林悠(川崎フロンターレ)が落としたところで放ったハーフボレーも際どかった」


遠藤航

「中盤で、青山敏弘(サンフレッチェ広島)とパートナーを組んでいた。チームはトランジション(攻守の切り替え)で質の高さを見せ、ラインもコンパクトさを保っていたが、遠藤は中盤で常にそのバランスを取っていた。

 小林に入れるロングボールは、まさに攻守一体。また、2点目は自らボールを持ち運び、中島に預けてから左サイドを駆け抜けている。コスタリカの攻撃力が乏しかったのはあるにせよ、効果的なプレーが多かった」


「日本の選手たちはおしなべて、レベルの高いプレーを見せた」

 エチャリはそう言って、他の選手たちにも及第点を与えている。


「後半に関しては、ほとんどワンサイドゲームだった。そのなかで特筆すべきは、ディフェンスの意識にあるだろう。攻撃をしながらも、常に守備のタスクとポジションを忘れず、危険を未然に防げていた。その安定によって、円滑な攻撃を続けられたのだ。ディフェンスに関しては、個人よりもチームとしての出来を賞賛すべきだろう。

 そのなかで、右サイドバックの室屋成(FC東京)は興味深いプレーをしている。2度にわたって、危険な攻め上がりを見せた。深いところまで進入できており、適切なタイミングでの攻撃参加だった。
 
 堂安律(フローニンゲン)も攻撃センスを見せつけていた。左利きのアタッカーで、右サイドからダイアゴナルにゴールに向かうプレーを好み、その感覚に優れている。インサイドに入ってパスを受け、GKとの1対1から左足でシュートを放った場面は、結果的にセービングされたが、いいプレーだった。また、自らボールを持ち運び、中に切り込んでのシュートはポストをかすめている。

 終盤は多くの交代選手を投入した。伊東純也(柏レイソル)は右サイドでボールを持ち運び、1対1を制して、切り返しから個人技でゴールを決めている。目覚ましいスピードとテクニックだった。ただし、コスタリカのディフェンダーは完全に追い詰めていただけに、なぜ間合いを詰めなかったのか、疑問が残る」


 エチャリは日本の可能性に明るい展望を示しながら、最後にこう締め括っている。

「日本人は一瞬の速さや献身性、さらにボールスキルに優れている。それをコンビネーションで活かせるか。そして、攻撃しているときには守備の準備をする”攻守一体”を身につけられたら、今後、さらなる成長が望めるはずだ」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/16/post_63/





2018.09.14 中山淳●取材・文

初陣勝利も森保監督の過大評価は禁物。
コスタリカ戦を冷静に細かく分析



 3-0で勝利したこともあってか、森保ジャパンの初陣となったコスタリカ戦に対する世間の評価はすこぶる高い。とりわけ試合を観た者にとっては、苦戦を強いられた前半よりも、ロシアW杯に出場していないフレッシュな選手たちが躍動した後半のイメージが強く残ってしまうため、うっかりすると過大評価につながってしまう可能性がある。

 そこで、客観的な視点であらためて試合をレビューし、ディティールから見えてきたものから、森保ジャパンのサッカーを分析、評価したい。そうすることで、コスタリカ戦で見せた日本の狙いと、それをどこまで実行できたのかが明確になるからだ。


 まず、この試合の日本をひと言で総括すれば、前半と後半では別の顔を見せたということが挙げられるだろう。

 ただし、前後半の内容の違いは、選手交代枠が通常より多く、それぞれの目的意識が異なる親善試合の特性でもあるため、主に外的要因によるところが大きいという大前提を頭に入れておく必要がある。

 たとえば、今回で言えば、日本は4日前に予定されていた札幌でのチリ戦が地震の影響でキャンセルされたこと、それによって練習時間と内容などスケジュールの修正を余儀なくされたという背景があった。また、コスタリカ戦が森保監督にとっての大事な初陣だったということも試合に大きく影響を与えた。

 逆に、コスタリカは4日前にアウェーで韓国戦を戦っていた。試合後の会見でロナルド・ゴンサレス監督も語っていたが、この試合のコスタリカは、移動を含めて日本よりもコンディションでハンデを負っていたこともおさえておくべきだろう。そして、今回の試合の目的のひとつとして、今後はコスタリカ伝統の3バック(5バック)だけでなく、4バックも併用できるようにトライをしている最中であったこともポイントとなった。

 これらの背景を踏まえ、両監督がこの試合で採用する布陣を決定したことが想像できる。準備不足の日本は、森保監督のトレードマークである3-4-2-1ではなく、現代サッカーの基本ベースとなっているオーソドックスな4-4-2。一方のコスタリカは、韓国戦で4バックをテストし、日本戦ではコスタリカの選手が慣れ親しむ3-4-1-2を採用した。


 そんななかで迎えたこの試合は、立ち上がりこそ日本ペースで展開したが、8分の南野拓実(ザルツブルク)のシュートシーンの後から、コスタリカの前線からの守備が機能し始めた。そこには、2トップが日本のセンターバック2枚にプレッシャーをかけ、トップ下の22番(ランドール・リール)とボランチの20番(ダビド・グズマン)が青山敏弘(サンフレッチェ広島)と遠藤航(シント・トロイデン)に厳しく寄せて、日本のビルドアップの起点を潰してしまおうという狙いが垣間見えた。

 そこからしばらくは日本が苦戦する時間帯が続いたが、その中で浮き彫りになった現象は主に3つあった。

 ひとつは、ボランチの青山と遠藤が得意とする縦パスが影を潜めたこと。それでも2人は何度か縦パスを狙ったが、たとえば14分の青山から南野へのくさびはカットされ、26分の遠藤の小林悠(川崎フロンターレ)を狙った縦パスはオフサイドに、また27分の青山の縦パスが相手に渡ってしまうなど、2人が起点となることはほとんどできない状態に陥った。

 2つ目は、ボランチが機能しないために、DFラインからのロングキックによってコスタリカのプレスを回避するシーンが増加したこと。そこにはDFライン4人の特徴も現れていて、左SBの佐々木翔(サンフレッチェ広島)と右CBの三浦弦太(ガンバ大阪)が安全な場所にパスすることでプレッシャーを逃れるため、主に左CB槙野智章(浦和レッズ)と右SBの室屋成(FC東京)がクリアに近いロングフィードを頻繁に蹴っている。ちなみに、GK東口順昭(ガンバ大阪)のロングキックも頻発していた。

 そして3つ目の現象が、ロングフィードが増えたことによって、両SBが攻め上がれない状態が続いたことだった。本来であれば、両サイドに2人を配置する布陣の日本は、1人しかいないコスタリカよりもサイドで優位な立場にあるはずなのだが、中盤を省略するために両SBが上がるタイミングが失われることになった。


 前半、日本の両SBが敵陣深い位置まで攻め上がってクロスを試みたのは、日本ペースだった立ち上がり7分の室屋のクロスが相手DFにブロックされてコーナーキックになったシーンと、同じく14分に室屋のクロスが相手GKにキャッチされたシーンのみ。佐々木に至っては、20分に中島翔哉(ポルティモネンセ)のスルーパスで好機を得たものの、相手が寄せてきたことですぐに中島に長いバックパスを戻してチャンスを無にしてしまった。

 また、日本の両サイドMFの中島と堂安律(フローニンゲン)がサイドに張って縦突破を図るタイプではないため、実質的に布陣は4-2-2-2に近い時間が多くなり、その結果、相手の両ウイングバックの位置取りも高くなった。これも、コスタリカの前線からのプレスがハマりやすくなった要因のひとつとなった。これでは、4-4-2を採用した狙いも台無しである。


 ただ、日本が救われたのは中島のドリブルだった。中盤を省略するなか、中島にボールを預けることができれば、数十メートルほどボールを運んで相手を剥がしてくれるため、相手の守備のオーガナイズを崩すことができる。前半に作った日本の多くのチャンスが中島のドリブル、あるいは堂安のキープ力によって生まれたのは単なる偶然ではなく、そこしか頼るところがない状態が続いたからだと見ることもできる。

 そんななか、前半に日本が作った2つのビッグチャンスは、縦にボールを蹴るスタイルではなく、パスをしっかりつないで相手を揺さぶってからシュートを狙ったシーンだった。

 ひとつは23分。青山が小林へ入れたくさびが収まらず、そのルーズボールを遠藤が拾ってからの展開だ。まず遠藤が室屋にボールを預け、右に流れた小林にパス。受けた小林が室屋に戻し、堂安を経由して再び小林がボールを受けると、中央でフリーの中島にパス。中島のシュートはバーを越えたが、それは日本がこの試合で初めて6本のパスをつないだシーンだった。

 もうひとつが38分のシーン。この場面は右サイドから青山が入れたクロスを相手DFが頭でクリアした後から始まった。セカンドボールを拾ったのは佐々木。そこから、中島、佐々木、遠藤、槙野、三浦とボールを回して最終ラインからのビルドアップが始まると、その後は青山、佐々木、遠藤とつなぎ、遠藤が南野に縦パス。南野が相手2人を引きつけて見事に反転して前を向くと、内に入ってきた堂安に預け、遠藤に戻す。

 このパス回しによって、前後に動かされたコスタリカ守備網中央に隙が生まれ、遠藤が小林に縦パスを入れると、小林が胸で落として、南野がダイレクトでシュート。惜しくもGKの好セーブに阻まれたが、13本ものパスをつなげた遅攻から、ビッグチャンスを作ることができていた。

 結局、前半はコスタリカのオウンゴールによる1点で終了したが、内容的にはほぼ互角だったと見ていいだろう。

 まずコスタリカは、狙いどおり前からの守備を遂行して日本を苦しめ、13分にはゴールチャンスも作った。逆に日本は縦に蹴ることで何とかそれを回避し、パスで相手を揺さぶってから2度のチャンスを作った。ボール支配率は日本が48%で、コスタリカが52%(最終的には49%対51%)。シュート本数は、日本が5本、コスタリカが4本(最終的には14本対6本)。


 1-0で迎えた後半は、開始からコスタリカが3人を入れ替えたので、典型的な親善試合の様相を呈した。従って、森保ジャパンの評価をするうえではほとんど参考外となってしまったことは否めない。

 コスタリカとしては、勝敗よりも今後につなげるテストを目的としていたためであり、逆にホームの日本は、「森保監督の初陣」を勝利で飾りたいという目的があったため、選手交代は68分まで行なっていない。両チームの試合に臨む目的が、後半の試合内容と最終スコアに大きく影響したと受け止められる理由である。

 しかも、後半のコスタリカは67分までに6人の交代枠を使い切り、2-0とされた直後の6人目の選手交代の後は布陣を4-4-2に変更。選手が大幅に代わり、さらにテストを兼ねた不慣れな4バックにしたことで、日本にとっては勝利を目指しやすい舞台が整ったというわけだ。

 コスタリカの守備網が崩れた状態が続いたことで、日本の攻撃は前半とは比較にならないほど機能した。それを象徴していたのが、両SBの位置取りが高くなったことであり、それによってパスコースが増えて中盤を省略する攻撃が激減したことだった。

 典型的だったのは、60分の堂安のシュートシーンだ。惜しくもGKの身体に当たり、DFにクリアされたその決定的チャンスは、GK東口のスローインから始まり、それを受けた佐々木から7本のパスをつないだ後に迎えたシーンだった。

 そして、66分に遠藤がルーズボールを拾ってから始まった南野のゴールも、パスアンドゴーを重ねてフィニッシュしたものであり、同じように中盤を作ってから手にしたチャンスは前半よりも圧倒的に増加している。

 また、佐々木と室屋の位置が高くなったことで、両サイドの攻防においても日本は優位に立ち、佐々木と中島、室屋と堂安のコンビネーションも大きく改善した。73分に室屋が相手ボックス内深いエリアまで走り込んでクロスを試みたシーンは、後半における日本のサイドでの優位性を証明するものだったと言えるだろう。


 とはいえ、これらは日本が自ら何かを修正して起こった変化というよりも、あくまでも相手の問題だと考えたほうが妥当だ。終了間際に伊東純也(柏レイソル)が決めた代表初ゴールも含め、そういった試合状況を加味したうえで、客観的に評価する必要がある。

 そういう意味では、この試合で高い評価を得た遠藤、堂安、南野についても、前半のパフォーマンスを基準にした方が論理的だ。この試合のMVP的活躍を見せた中島も、ベストメンバーの中に混じって欧州や南米のトップレベルのチームと対戦したわけではないので、太鼓判を押すわけにはいかない。

 それは森保采配についても同じだ。今回は準備時間が短かったので細部までは詰められなかったとは思うが、もし前半のような「中盤を省いて縦に蹴るサッカー」を目指していないのであれば、あの段階で選手に指示を出して何らかの修正を施す必要はあったはず。

 選手のアドリブ任せでチームづくりを行なうなら、「選手が持っている能力以上のものを引き出すこと」を求められる監督の存在価値はない。会見で何度か口にした「良い経験をさせていただいている」という意識だけで、日本のトップオブトップである代表監督を務めてもらっては困るのだ。

 もろ手を挙げて喜ぶのは時期尚早。10月の2試合で森保監督がどの布陣を採用し、コスタリカ戦で活躍した選手が同じようなパフォーマンスを見せられるかどうかに注視する必要がある。とりわけ10月16日に予定されているウルグアイ戦が、森保ジャパンの本当の試金石となりそうだ。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2018/09/14/post_61/




長くてすまん。



エチャリ氏のレポートを元にした前半2つの記事は、かなりポジティブに、

後半の記事は、ネガテイブと言うか、やや辛口に書かれている。



自分の感想としては、

前半に関しては確かに良くない時間帯もあったが、

最初の試合としてはそれほど悪くもなかったと思う。

後半の出来はとても良かったし、見ていて楽しかった。

しかし、やはりコスタリカのパフォーマンスが悪かったので

正しく判断するには時期尚早だろう。



10月の親善試合でどうなるかを見てみたいが、

次は若手を大量招集するかもしれないという記事もあるし、
  ↓
https://article.auone.jp/detail/1/6/11/103_11_r_20180912_1536737566056637

しばらくは様子見だろうか。




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