サイバーダイン、災害対策用HAL公開、自律制御を中心に構成

サイバーダインは、10月17～19日開催の「Japan Robot Week 2012」にて、「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」（2011～12年度、NEDO）で開発した災害対策用ロボットスーツ「HAL」の試作3号機（動画1、写真）を公開した。下肢機構のみで構成されるHALによりパワーアシストされるため、ステンレス製の遮蔽板やクーリングシステム（冷却機器）を背負いながらの作業が可能。ガンマ線の被曝量が5割程度低減されるため、高線量下でも一定時間作業できる。
　HALは通常、随意制御と自律制御との組み合わせによりアシスト力を発生するシステムとなっている。災害対策用HALでは発汗などの影響を考慮し、随意 制御の要となる生体電位センサを使用しないため、自律制御を中心にアシスト力を発生するシステムとなっている。ゆえに、自在に扱ってもらうためには「装着 者に自律制御に慣れて（アジャストして）もらう必要がある」（山海嘉之CEO、筑波大学教授）としている。今後、検証用として5～10体を製作し、早けれ ば年内にも試験運用に入る。

動画1　公開した災害対策用HALのデモ。デモの後半では20kgの重りを2つ背負って屈伸運動を行っている。床反力センサを内蔵したシューズにそのまま搭乗して使用する。

　HALは、随意制御と自律制御との組み合わせにより適切なアシスト力を発生するシステムである。前者は、筋肉を動かそうとする脳からの生体電位信号（表 面筋電位）を生体電位センサで検出・増幅し、それをもとにパワーユニット（サーボモータ）を制御する。後者は人の基本動作をパターン化しており、それに合 わせて制御を行う。これらの処理は、生体電位信号の利用により、筋肉が動き出すよりもわずかに早いタイミングでなされるため、装着者は違和感を憶えること なく動作できる。また、生体電位信号は身体を動かそうとする力の強弱により差が生じるため、この情報もアシスト力に反映させている（随意的制御機構）。随 意制御と自律制御を組み合わせて制御するゆえ、「HAL（Hybrid Assistive Limb）」と名づけている。

  災害対策用HALでは、発汗などの影響により生体電位センサが剥がれるといった指摘から、同センサの使用を取りやめた。脚底の床反力センサと追加した加速度センサ、モータのエンコーダ情報をもとに姿勢情報ならびに動作意図を推定してパワーアシストを行う。

　アシスト力の調整は自律的に行っており、例えば、接地して体重および各種装備の荷重がかかる瞬間に強く出力されるようにしている。一方、接地時は回転軸 まわりの角速度に対する抵抗を増減する粘性補償により柔らかく接地するようにしている。サーボモータは両腰部と両膝部に計4つを搭載。足首部はバネ機構に より動作を補償している。

  自律制御を中心に構成した災害対策用HALは随意的制御機構を実装しないため、HAL本来の違和感のない動作は望めないが、装着者に教育訓練を通じて慣れてもらえば、ある程度、違和感なく使えるとしている。