さて、この勧業模範場の報告書はM40(1907)からT3(1914)まで確認できました。それ以降も報告書自体はあるのですが養蚕や綿花など特定品種に対する研究報告でした。おそらく報告自体はずっと続いていたと思われますが、その辺は不明。また、大邱・平壌以外の支所はそれぞれ特化した産品(龍山は養蚕、木浦は綿)に関する報告のみになります。加えて支所については報告自体ががある年と無い年、品種についての報告もまちまちでした。
さて、品種に関しては早神力・石白を中心に育成状況や施肥などの実験が行われており、その他の品種は「まず育ててみて様子見」という感じでした。
特に早神力と石白は全国の模範田に配布され収量成績を確認しています。在来種の主力と当初考えていたと思われる趙同知はいつの間にか報告から消えてしまいます。
陸稲はオイラン・フンデチャンゴミーが中心だったようです。
いずれの年度・陸稲水稲の別なく日本種の方が成績が好調であり、在来種については品種改良や馴化、品種特性の研究などのために育成されていたようです。ちなみに陸稲はずっと畑作に分類されていました。陸稲の研究はM42(1909)以降、報告量も増え(施肥状態の研究など)品種も増えています。
陸水両方の日本種は新潟・島根・東京・埼玉・長野・三重(品種名:浅賀・博覧会)・兵庫・長崎等から集められていました。在来種は水原の紅租、群山のバッペー、黄州の毛租、長瑞のボリぺー、木浦の木浦と広範囲から集められています。
一体いくつの研究品種があったのか。列挙します。どこでいつ栽培されたか、原産地はどこか、と言うものは一切省きました。実際には原産不明ではありますがどう見ても日本・在来が推定できるものはそれぞれ分類し、全く分からないもののみ不明(2種)としました。
日本種 水稲39種
愛国・青撰・赤糯・荒木・石白・出雲・近江・大場・御前糯・加賀早生
・金子・郡盆・光明錦・穀良都・下田軽子・寿良平・白糯・信州・関取・高千穂
・高宮・多摩錦・太郎兵衛糯・常豊・鍋島・錦・二千本・農場の光・八反流・早神力
・日の出・兵庫・豊後・保村・万作・明治錦・明治穂(錦の誤?)・八頭・和田錦
在来種 水稲28種
雨来・黄州・紅租・定金租・白川・白竹中租・坐租・タコベー・多々租・タダベー
・チュチベー・チュンチョンモッペー・趙同知・チョートンジー・トーテツ粘租・粘租
・ノインタテキ(有芒種)・バッペー・冷租・紅竹中租
・ボリべー・豆租・麦租・牟里租・毛租・ヤンプン粘租・倭租・倭米里
不明 水稲1種
タイコシネ
日本種 陸稲16種
浅賀・粳子・大畑早生・オヒラン(オイラン)・尾張糯・金子・霧島・黒鬚・七里ヒッパリ
・信濃早生・仙台・博覧会・早不知・常陸錦・三石・ヤカン
在来種 陸稲7種
木浦・紅租・山頭租・田優糯・趙同知・ノグチョニー・フンデーチャンゴミー
不明 陸稲1種
満州
在来種の名称・育成について特徴的な事は三つ
1 紅租・趙同知の二種は水稲・陸稲の両方の品種として育成試験が行われていること。
特に両品種とも当初は水稲として水原で育成されていますが、紅租は水原で水陸同時に育成されている期間があります。趙同知は大邱で陸稲栽培試験が行われて、これと呼応するように水原の報告からは消えてしまいます。
2 在来種には○○租と言う表現が多い事。
字義や朝鮮半島での使われかたについては調べておらないのですが、「何とか」米とか、そう言う意味合いなのでしょう。紅租は赤米系かもしれませんし、豆租・麦租・毛租というのは形状の表現ではないかと思います。
3 倭租・倭米里 と言う品種がある事。
今回の件でFmdoll氏より貴重なかなり古い文献(15世紀末)をいただいたのですが、この中に稲の品種として倭××とか、□□里という名称があり、こうした古い呼称の稲も脈々と残っていたと思われます。品種としても古いのではないかと推測しています。
なお氏の文献から、半島にかなり古い段階で日本の稲が流入し育てられていたことを知り、結構驚いております。
結語(かなり内容ははしょってます。本当は全部書く事もできなくはないのですがお祭りも終わったようですし)
稲作は南西部に偏りが認められ、のうみん氏ご指摘の通りかなり水と温度に苦しんでいた事が試験場の状況からもはっきりしています。そう言う中で水原では当初水稲中心の研究を推進し、水稲耕作を拡大しようとしていた節があります。しかしながら数年でその考えから、現地に即した陸稲などの研究、また救荒作物や商品作物の研究にややシフトしていったと見られます。
それでも当時最先端の科学的考察を元に収量の確保をし、小作組合を育成するなど農家の教化を進め、品評会に商品(鋤や鍬)を出す事で米作農家の勤労心意欲を向上させるなど、米作の拡大に努めていた、それがこの当時の勧業模範場であったのです。
おまけ
朝鮮地誌資料(T8:1919)に垈に関して面白い統計があったの抽出してみました。

各地域の面積をまずあげ、耕地・垈とその合算値を統計にしていた表からのものです。
さて、韓国で使われた地名は、日本の「ぬた」の意味でしょうか?(Yes/No)?
1 いったよな、この字は水はけの悪い土地じゃないのか?おまえがそう認めるまで何度でも聞くからな。みんなそう思ってるだろうし。
2 どう見ても宅地です本当にありがとうございました。この表は土地利用の状況を確認するために耕地と宅地を合算し、どれ位土地が活用されているかを確認するためのものです。
おまけのおまけ
まだつぼみ状態ですが、もうすぐ近所はこうなります。個人的には吉野桜の方が好きなのですが、これはこれでよろしいかと。
