韓国には、日本人が来る前から女性の人身売買の長い歴史があった

西岡 勉  2017年11月25日

この作品は、月刊誌『月刊Hanadaセレクション 絶望の韓国と悲劇の朴槿恵大統領』2016年12月号に「ソウル大学教授、慰安婦性奴隷説を否定」というタイトルで掲載され、JAPAN Forwardで連載されています。

（全3部構成の第2部）

パート1：韓国人教授が慰安婦は性奴隷ではなかったと考える理由

ソウル大学の経済学名誉教授、イ・ヨンフン氏は、慰安婦問題に関するオンライン講義で、日本統治下の韓国の話から、朝鮮王朝による長期にわたる統治期間の一部である17世紀の韓国の話に移った

1996年、韓国のある教授が『『北方赴任日記』に見る17世紀北方領土駐在武官の生涯』という著書を出版しました。これは、中国との国境防衛のため、朝廷から北方領土に派遣された朴という武官の体験を綴っ たものです。日記には、北方への旅の途中で共に寝た女性たちの様子が綴られています。

パクの日記によると、1644年12月11日から1645年10月25日までの11ヶ月間に、彼は23人の女性と寝た。その中には、官吏に仕える妓生（歌舞姫、妾と妾を兼ねることが多かった）、女中、酒場の女房などが含まれていた。パクは着任後、妓生を一人与えられ、 その地域に駐在している間、妻として指定された。

パク氏の父も同じ地域に派遣されており、おそらく偶然ではないだろうが、パク氏は 父が韓国にいた間、現地の妻だった妓生の娘と親密な関係になった。李教授は文献を引用しながら、両班（韓国を統治していた文武両班の集団）が妓生、召使、その他の女性に対して性的目的の誘拐を繰り返し行っていたことを詳細に証明した。

李氏は次に、1678年から1885年にかけて江原道で行われた両班と女中との婚姻関係に関する研究に着目した。この研究によると、夫婦が1人ずつという正常な関係の世帯はわずか107世帯（58%）だった。妻が1人と夫が2人以上という世帯は15世帯（8%）。妻と父親が不明な子供で構成される世帯は37世帯（20%）。父親と母親が不明な子供で構成される世帯は25世帯（14%）。つまり、両班と女中が関係する世帯の約40%が崩壊家庭だったことになる。

少女の人身売買が蔓延

これを踏まえ、イ氏は「両班は女中を暴力で支配した」とし、「貧困によって家庭内の道徳が崩壊し、女性を女中として働かせた。中流階級に安定した家族制度が定着したのは近代に入ってからで、庶民が娘を売春婦として売るケースも少なくなかった。慶尚北道安東には売春婦のための閲覧室があり、平壌には妓生のための閲覧室もあった。両班が多いところでは、庶民はこぞって娘を売った」と論じた。

後に韓国政府に名乗り出て、日本軍に拉致され慰安婦として働かされたと主張する170人の女性のうち、57%が慶尚北道で拉致されたと主張した。李氏はその理由について、「慶尚北道が釜山に近いからではなく、むしろその地域に両班が多かったからだ」と主張する。「慰安婦は、朝鮮時代、慶尚北道で行われていた過酷な人身売買の延長線上にある。両班が最も多かった地域では、庶民や使用人を支配するための暴力、使用人や庶民の貧困が最も深刻だった。その結果、女中が正常で倫理的な家庭を築くことは事実上不可能になり、多くが娘を売春婦として売らざるを得なかった」

李氏はその後、朝鮮半​​島における日本の支配をめぐる議論を転換させる。1934年に書かれた「売られた娘たち」というエッセイを引用し、慰安婦制度が存在する以前の時代に、朝鮮には娘を売った親が数多くいたと述べている。

「大邱に住む15歳の少女が37歳の父親に160円で売られた。その同級生たちは、少女を取り戻すため、娼婦代（売春婦を買ったり、売春をやめさせたりするための金）を募っていた。東洋では、親が娘を売ることは決して珍しいことではない。……また、男が他家の妻や娘を騙して売春に売ったり、夫が自分の妻を売ったりすることも珍しくない。 ……売る側も買う側も、双方にとって儲かる商売だ。こうした女たちは、芸妓、公娼、酒盛り、妾などと呼ばれるようになる。」

売春に対する最初の規制

次の記事は、1939年3月28日に韓国で発行されている新聞「毎日新聞」に掲載されました。

娘は泣きながら、貪欲に目がくらんだ両親が自分を売ろうとした時のことを警察に話した。「死ぬより辛かった」と彼女は言った。

妓生として働いていた娘は、満州で娼館を経営していたシンという人物から1300円を受け取った後、両親に売られそうになった。しかし、彼女は「自分の肉体を売る娼婦の仕事はできない」と警察に逃走した。警察は両親を召喚し、現在、事件の真相を捜査している。

李氏は朝鮮時代と日本による朝鮮半島統治時代の違いを指摘した。

19世紀までは、親が娘を売ることは稀でした。身分に基づく抑圧が非常に強かったのです。産業化時代に入ると、人身売買ははるかに蔓延しました。その法的証拠が公娼制度です。

韓国に持ち込まれた公娼

李氏は、日本軍慰安婦制度について議論する際の前提として、日本軍慰安婦を理解するには、まず日本が朝鮮にもたらした公娼制度を理解しなければならないと述べている。彼は次のように説明する。

1916年、朝鮮総督府は借地で営業する売春婦に関する規則を制定しました。酒盛りの女房や芸妓については既に規則がありましたが、売春婦に関する規則は1916年に初めて制定されました。これが、親が娘を売る法的根拠となりました。

両親は前金を受け取り、娘が買主に同行することを拒否した場合、売春宿の経営者は娘を強制的に連れ去った。このような売春宿は韓国全土に34軒存在し、問題となった条例はこれらの売春宿に対する非常に厳しい規制だった。

公娼に関する規制

* 売春婦は、その意に反して契約の変更や女将（芸者小屋）の変更を強制されてはならない。

* 売春婦は正当な権限なく、契約を交わしたり、売春の仕事を辞めたり、他の人と連絡を取ったり会ったりすることを妨げられてはならない。

* 賃貸物件を経営する者は、すべての顧客の名前を記載した補足記録を保管しなければなりません。警察署長は使用前に検査を行い、各顧客の訪問記録を保管しなければなりません。

* 賃貸物件管理者は、売春婦一人につき家賃計算書を2冊保管する。1冊は売春婦に渡す。前月の家賃は毎月3日までに詳細に記録し、管理者と売春婦が帳簿に印鑑を押して確認する。

※売春行為を開始しようとする女性は、まず、戸籍謄本、住所、氏名、売春行為を行う際の名称、生年月日、営業所を記載した「売春行為開始願」を賃貸物件の管理者と本人の印鑑を押印の上、以下の書類とともに警察署長に直接提出し、許可を得なければなりません。

1/ 父、母、または世帯主からの同意書

2/ 同意書に署名した者が使用した印鑑の真正性証明書

3/ 戸籍謄本

4/売春ビジネスと前金に関する契約

5/ 女性が売春婦になった理由を説明する文書

6/ 指定医師の署名入り健康診断書

※賃貸物件以外での売春行為は禁止します。

* 売春婦は警察署長の書面による許可なしに指定地域外で働くことはできません。

* 売春婦は定期的または臨時の健康診断を受けなければなりません。

* 売春婦として働く許可を受けた後、女性は実際に初めて売春を行う前に警察署長に報告しなければなりません。

* 売春行為をやめる場合には、女性は自ら警察署長に出頭し、許可状を添付した届出書を提出しなければならない。

※賃貸物件の管理者は、売春婦に対し、外部から見える場所で化粧をさせたり、営業所前で徘徊したり列を作ったりすることを禁止します。

遊郭の客の台帳をつけることが義務付けられていました。この台帳には、客の来店時刻と退店時刻（時間単位）、顔の特徴や服装、依頼した娼婦の売春名、遊興費、住所、職業、氏名、年齢などが記載されていました。

性病検査も厳格に実施され、朝鮮人売春婦は年間45回、日本人売春婦は年間54回実施されました。その結果、朝鮮人売春婦の性病罹患率は6%、日本人売春婦の罹患率は3.8%でした。

用語の混乱

韓国には公娼制度の下で働く売春婦が20万人おり、月間3,000万人の客を相手にしていました。これは、売春婦1人あたり月150人、つまり1日約5人の客を相手にしていた計算になります。

李氏は次のように指摘した。

ヨーロッパの一部の地域では、現在でも公娼は合法です。公娼は労働組合を組織し、社会福祉の受給者でもあります。日本の社会は天皇を頂点とする社会構造をとっています。売春婦にも労働組合があり、彼女たちの利益は社会全体に認められていました。（中略）日本軍慰安婦問題を理解するには、公娼制度をめぐる歴史について、少なくともこれだけは理解しておく必要があります。

李氏によれば、慰安婦制度は、性病の蔓延を防ぐ、兵士が民間人女性に対して強姦罪を犯すのを防ぐ、兵士が民間で働く売春婦を利用する場合に起こり得る機密情報の漏洩を防ぐなど、さまざまな理由で日本軍によって設立された。

軍は陸軍省、朝鮮総督府、朝鮮駐屯軍、台湾総督府、台湾駐屯軍に入隊願書を送付した。これら4つの機関が募集斡旋業者を選定し、認可した。斡旋業者は、公娼制度下で既に定着していた人身売買の手法を用いる業者を利用し、慰安婦を募集した。これらの手法とは、（募集された女性の）両親に前金を支払うというものだった。

李氏は次に、名乗り出た元慰安婦の証言を分析した既存の研究を紹介した。この研究によると、これらの慰安婦のうち、82人が雇用詐欺、62人が脅迫や暴力、4人が人身売買、5人が拉致・拉致の被害に遭ったことが明らかになった。しかし、「これら4つのカテゴリーは同一のものである」と指摘した。

つまり、公娼制度の下では、娘と引き換えに親が前金を受け取ったことは雇用詐欺であり、また、仲買人に抵抗して逃亡を図った娘に対しては暴力が振るわれたのである。

リー氏は、軍や政府当局による拉致があったという主張を公然と明確に否定した。「女性たちが道端で襲われ、トラックに押し込まれたというのは事実ではありません。女性が拉致されたとか、性奴隷狩りがあったとか言うのも事実ではありません。」

慰安婦の口述記録の変化

韓国国民にそのようなことを信じさせたのは日本人だと李氏は言う。

これらの物語は、ある日本人男性によって創作されたものです。吉田清治という日本人が書いた本はベストセラーになりました。この本が韓国に渡り、そこから韓国人は初めて、このような強制的な拉致があったと信じるようになりました。済州新聞は、吉田清治の話は事実ではないと報じました。

李氏は視聴者に対し、日本の主要新聞社が吉田氏の発言に関する報道を撤回するのに30年かかったと語った。

その後、彼は議論を元慰安婦の証言に移した。これらの証言は繰り返されるたびに変化し、聞く者それぞれが聞きたいことを聞かされているかのようだ。娘を売った親への恨みを隠すために、証言は変化していくのだ。

口述証言を史料として用いる際には、極めて慎重でなければならない。歴史研究において口述証言が初めて用いられたのは1920年代、アメリカ合衆国の元奴隷たちから証言が集められた時である。これらの証言は参考資料としては有用であったが、歴史学界の立場では、一次史料として用いる際には事実と虚構を区別するために細心の注意を払うべきである。元慰安婦たちの口述証言を一目見るだけでも、これらの史料のみに頼って歴史的事実を判断することの困難さが理解できる。

人身売買と雇用詐欺

李教授は、韓国政府の強制動員に関する調査委員会に提出された元慰安婦遺族の資料の一部を図表を用いて紹介した。遺族たちは、事件は「就職詐欺」と「人身売買」だったと認識していたと李教授は確認した。さらに、韓国の女性研究者がインドネシアに当時居住していた韓国人の名簿から氏名と住所を割り出し、元慰安婦の遺族のほぼ全員が「就職詐欺」の被害にあったと証言したという。

李氏はさらに、1941年に朝鮮総督府北京支局が発行した『華北在住朝鮮人の概況』という文書から、次のような一節を引用した。「朝鮮人男性は、その独特の語学力と強靭な生活習慣によって、軍の進撃に遅れず、あるいは先んじて行動することができた。……彼らは特定のタイプの女性を連れてきて軍の慰安所を設立し、……まだ政情が安定していない地域で莫大な利益を上げ、前線に進出している。」

この同じ文書には、華北に732人の朝鮮人売春婦と酒を注ぐ女がいたと記されている。李氏は、この地域にいた朝鮮人慰安婦の数は最大で1,000人だったと推定している。李氏は後にこの数字を講演の最後に慰安婦の総数を推定する際に用いた。