北朝鮮がロシア軍に100両以上を提供したといわれる240ミリ放射砲（M1991多連装ロケット砲）の、現地における実射撃の様子が初めて公開された。ロシア軍が北朝鮮製240ミリ放射砲を運用している様子は、4月にウクライナのメディアを通して公開されたが、実射撃の様子が映像で確認されたのは初めてだ。ロケットを連続発射できる240ミリ放射砲は、韓国の最前方一帯に配備され、「ソウル火の海」用に活用されかねない兵器として知られている。

【写真】北朝鮮がロシアに支援した240ミリ放射砲が現地で射撃を行う様子

　通信アプリ「テレグラム」にウクライナ側が開設したものとして知られるチャンネル「ティスク（Тиск）」およびX（旧ツイッター）の「スペシャル・ヘルソン・キャット（Special Kherson Cat）」は、ロシア軍が240ミリ放射砲を発射している短時間の動画をシェアし、「北朝鮮軍の240ミリ放射砲が戦闘に使用されている場面が初めて公開された」とコメントした。16秒の動画には、道路に停車して発射管に仰角を付けている北朝鮮製240ミリ放射砲が、およそ1秒間隔で2発のロケット弾を順次発射する様子が収められている。

　北朝鮮の240ミリ放射砲は最大22連装が可能と伝えられている。韓国首都圏を脅かしている北の長射程砲340門のうち、240ミリ放射砲は200門ほどだ。韓国軍当局は、これらの長射程砲が、戦争が始まったら1時間で最大1万6000発の砲弾を韓国首都圏にばらまくことができるとみている。そんな兵器がウクライナ・ロシア戦争で活用されているのだ。米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所（CSIS）」は、この放射砲について「北朝鮮がソウルを脅かす中心的な手段の一つ」だとし、「短時間で発射されるので迎撃が難しい」と評した。

　ウクライナ・ロシア戦争への北朝鮮軍の参戦は2024年10月中旬ごろからだといわれる。韓国軍当局は3月、北朝鮮が今年初めにロシアへの3000人規模の追加派兵を行ったのに続き、ミサイルや砲弾の支援を行っていることを明らかにした。韓国軍の合同参謀本部（合参）は、ロシアに派兵された北朝鮮軍は合わせておよそ1万1000人、このうちおよそ4000人が死傷したものと把握している。こうした中で、増員という観点から、今年初めに3000人規模の兵力を送り込んだのだ。合参は、北朝鮮が兵力のほかにもミサイルや砲兵装備、弾薬の支援を継続しているとみている。現在までに170ミリ自走砲や240ミリ放射砲などおよそ220門、短距離弾道ミサイル（SRBM）などを支援したことを把握している。