2025年7月23日  日本経済新聞

【ソウル=松浦奈美】韓国の大韓商工会議所は日韓の経済連携の重要性を訴えた政策提言書「新しい秩序、新しい成長」を刊行した。日韓の国内総生産（GDP）を足せば6兆ドル（約880兆円）規模の経済圏になると指摘し、欧州連合（EU）のように産業規格や環境規制を統一する案を示した。

液化天然ガス（LNG）の購入や半導体製造装置の開発などに共同で取り組むことを提言した。「ルールの追随者ではなく制定者になれば、国際社会で声が大きくなる」と主張している。

日韓両国は製造業を中心として成長が頭打ちになっていることや少子高齢化といった類似の問題があると指摘。「協力すれば互いの弱点を補完し、新たな成長機会を創出できる」とした。

トランプ米政権による関税措置や米中対立で通商リスクがかつてないほど高まっているとして「日韓は単独で危機を克服するには限界がある」とも強調した。

試験的に規制緩和を適用する特区「メガサンドボックス」の概念も提唱した。韓国に「日本ビレッジ」を設け、医療や観光などで新ビジネスを立ち上げやすい環境をつくる意義を訴えた。ビザ手続きの簡素化で技術人材の往来を促すモデルも示した。

同会議所の代表で大手財閥SKグループの崔泰源（チェ・テウォン）会長が提唱してきた内容を書籍にまとめたもので同様の出版は初めてという。

崔会長の発言を産業や経済の専門家13人が監修した。6月末に出版し、政治家や企業などに計1500部を配布した。日本語への翻訳も検討している。

出版の契機は6月初めの政権交代だ。日韓関係は保守派の尹錫悦（ユン・ソンニョル）前大統領下で大きく改善していたが、新たに発足した革新派の李在明（イ・ジェミョン）政権でも良好な関係を維持できるか、財界から懸念の声が上がっていた。