韓国開発研究院（ＫＤＩ）が中国と米国の貿易依存度を下げ、貿易多様化のために包括的・漸進的環太平洋経済同伴者協定（ＣＰＴＰＰ）の加入推進を急ぐ必要があると提言した。最近、米国関税、中東情勢急変などグローバル通常不確実性拡大に対応するためだ。

ＫＤＩは今月「2010年代以降、貿易構造の変化と経済安全保障に対する含意」報告書を発表し、貿易国の多様化のために包括的・漸進的環太平洋経済同伴者協定（ＣＰＴＰＰ）加入が必要だという分析を出した。

対中貿易は2015年の韓中自由貿易協定（FTA）が発効して以来着実に増加したが、2018～2023年に約600億ドルの純輸出減少が発生し、最近貿易収支がマイナス転換した。 （中略）

総合すれば中国産の輸入依存度が大きくなれば中国製品は代替材の性格が強く、韓国貿易収支の悪化を招き、国内産業競争力を悪化させるという分析だ。米国は韓国から半導体、家電、自動車などに少数品目で大きく損害を見ており、該当品目を関税標的にする確率が高いと説明した。 （中略）

特に、2021年以降に足踏み状態のままとなっているCPTTPの加入推進を急がなければならないという見方だ。CPTTPは米国と中国を除く12の加盟国間の高水準の開放を標榜しており、米中貿易依存も緩和とサプライチェーンの安定化に効果的であると説明した。
（引用ここまで）

　今月22日にEU委員長と大統領が訪日しまして。
　日・EU首脳会談が実現しています。

第30回日・EU定期首脳協議（外務省）

　EU加盟国からはCPTPPへの加盟・接続がぽつぽつと語られるようになってきています。
　今回の訪日では表立ってCPTPPについての話は出ていませんが、訪日陣の一員であるフォンデアライエン委員長は6月頃に「TPPと連携し、さらに自由貿易を堅持するための新組織も」みたいな話をしています。

EU委員長 TPPの国々と連携し自由貿易推進する新組織の構想示す（NHK）

　さらにいえばASEANも「ASEAN加盟国の何カ国かはCPTPPに加入しているがASEAN全体ではどうか」みたいな話をし出しています。
　まあ、どちらもトランプ関税によるダメージを食らっているので、他のところと貿易で関係性を深めたいって気分なんでしょうけどね。



　地味に「CPTPP結成に旗振り役となった」日本の国際的な地位が向上しつつあるのも面白いですね。
　かつては「CPTPPなんて世界貿易の10%にもならない」くらいの扱いだったのですが。
　でもまあ、CPTPPって実際の輸出入をしているところからは楽だとの話を耳にします。
　加盟国への輸出は均一な基準になっていて、相手国独自の規制とかほとんど気にしなくていい。「包み紙を変えるレベルでいい」のだそうです。
　個別FTAだとそうは行きませんからね。

　まあ、そんなわけで保護貿易に走るトランプ政権のおかげって部分もあってCPTPPがクローズアップされているわけです。
　おそらくEUについては「接続」よりも「取りこみ」を狙ってくると思うので油断しないほうがいいとは思いますが。

　で、そんな中で韓国も「CPTPPに加盟すべきだ」論が盛り上がっているのは何度かお伝えしています。
　明記はされていないのですが、なんかこう「韓国が加盟を望めばすぐにだってかなう」みたいな感覚がどっかにあるんだよなぁ。
　「あの韓国が、CPTPPに加盟してやると言っているんだよ！」って感覚。

　実際には対米でも対中でも貿易に行き詰まっている韓国に行き場所がなくなっているからCPTPPにも加入しなければならないってのが実情なんですが。
　ま、どっちにしても加盟を希望するならまず日本の水産物輸入規制を撤廃してからじゃないと話になりませんね。
　科学的背景を持たない輸入規制は厳禁ですから。
　で、その上で加入を希望している中国、コスタリカ、台湾、エクアドル、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア等々の後ろに並んでくれって話ですね。