ケイ海明（ケイは刑のつくりをおおざと）元駐韓中国大使が北京で開催された韓中高位フォーラムに出席し、韓国政府に対して「反中極右勢力を取り締まるべきだ」と発言した。過去にも中国政府官僚が韓国国内の反中感情を批判したことはあるが、「取り締まれ」と直接要求するのは異例だ。10月末に慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議（APEC）首脳会議への習近平国家主席の出席が検討される中、中国が李在明（イ・ジェミョン）政権に対して反中世論の押さえ込みを求めるメッセージを送ったと解釈できそうだ。

【写真】共に民主・李在明代表とあいさつを交わすケイ海明・駐韓中国大使

　ケイ元大使は29日に開催された第25回韓中高位指導者フォーラムの政治外交セッションに出席し「韓国の反中世論は極右勢力が造成している」と決め付け「彼らを政府が取り締まらねばならない」と発言したという。フォーラム出席者が本紙に伝えた。極右勢力とは具体的にどの集団を指すかは明らかにしなかったようだ。

　韓中高位指導者フォーラムは中国人民外交学会と21世紀韓中交流協会が共同で主催する定例行事で、韓国と中国の高官クラス20人以上が出席する。今年は韓国側から金漢圭（キム・ハンギュ）元総務処長官（21世紀韓中交流協会長）、洪起元（ホン・ギウォン）共に民主党議員、金健（キム・ゴン）国民の力議員、河泰慶（ハ・テギョン）保険研修院長など13人が出席した。中国側からは閣僚級の王超・中国人民外交学会会長をはじめ、元長官や次官、研究者など15人が出席した。

　ケイ元大使は4年半務めた駐韓中国大使を昨年辞任し、中国外交部（省に相当、以下同じ）亜州司（局）に所属が移った。ケイ元大使は大使在任中の2021年7月、当時野党の有力な大統領候補だった尹錫悦（ユン・ソンニョル）前大統領がメディアの取材に「在韓米軍のTHAAD（高高度防衛ミサイル）は明らかに韓国の主権的領域」と発言した際、翌日同じメディアへの寄稿で「理解できない」と反論した。23年6月には当時共に民主党代表だった李在明（イ・ジェミョン）大統領と会談し「米国の勝利に賭ける人たちは後から必ず後悔するだろう」と述べ、これが内政干渉との非難を浴びた。

　中国政府は昨年4月に「周辺国外交強化」を打ち出し、これを受け韓国国内の反中世論に神経質になったとの見方もある。戴兵・駐韓中国大使は7月10日「『中国崩壊』だとか『中国の脅威』などを無批判に受け入れれば、両国の協力に害をもたらす」と発言し、最近は韓国外交部次官と会談した席で「反中集会」に不快感を示したという。