Bloomberg
【コラム】訪日客のお土産は日本の価値観、株高にも寄与
2025年8月21日 13:30 JST
訪日観光客の間で思わぬヒット商品となっているのが、2003年公開の映画「キル・ビル」に登場したスニーカーだ。
アシックスはこのブランドを一時廃止していたが、2000年代前半に復活。新型コロナウイルス禍後に日本を訪れる観光客の間で、履き心地が良く、時代を超えたデザインのスニーカーとして大人気となっている。日本国内での売上高が1年で倍増し、その増加分のほとんどが訪日客によるものだという。
実際に外国人観光客による昨年の消費額は8兆1000億円に達し、アシックスのような企業の利益にもその影響が色濃く表れている。そしてこの傾向は、同社に限った話ではない。
直近の決算期では、米国による関税の影響に注目が集まったが、より注視すべきは、本物の日本らしさを体現したブランドが訪日客に買われ、その傾向が海外市場へも拡大しているという流れだ。
例えば、サンリオの売上高は依然として国内中心だが、今は訪日客による買い物が国内商品売り上げの約40%を占める(これは日本の免税制度により追跡可能なデータだ)。同社の株価は19年の水準から10倍以上に上昇している。
回転寿司チェーン「スシロー」を傘下に置くFOOD & LIFE COMPANIESは、東京など都市部の店舗が観光客でにぎわっており、海外展開も進めている。26年度までに海外店舗数を320店に増やす計画で、5年前はわずか38店だった。中国本土の1号店が昨年開業し、一部では「中トロ」を求めて10時間待ちの行列ができたと報じられている。
ミニマリズム
「いきがい」などの紋切り型の日本らしさに頼るまでもなく、これらの企業には共通点がある。手頃な価格と高品質、そして美的なミニマリズムだ。こうした特性が長年、日本らしさとして消費者の心に響いてきた(中国の名創優品集団など、同じような感覚をまねようとしている外国企業もある)。
この変革の象徴的な存在がファーストリテイリングだ。同社はかつて、デフレに苦しむ日本が安価なファストファッションに頼らざるを得ない姿を映し出しているとされていた。
当時は売り上げの9割が日本国内だった。その後、ユニクロはミニマリズムを体現しつつもアイコン的なブランドへと進化し、22年には海外売上高が国内を上回った。
もちろん、成功する企業全てがミニマル志向である必要はない。全く異なるスタイルで成功しているのが、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが展開しているディスカウントストア「ドン・キホーテ」だ。
日本のソフトパワーの代表格とされるゲーム大手にも触れておきたい。オニツカタイガーのバッグを手にした観光客が、もう一方の手に任天堂やカプコン、セガサミーホールディングスのグッズを持っている光景は珍しくない。
最近では、セガのゲームキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」と米VF傘下のブランド「ティンバーランド」がコラボしたスニーカーが、数分で完売した。
旅のお土産はすぐに忘れられるかもしれない。しかし、こうしたブランドは時を超えて愛される力を持ち、日本のソフトパワーをハードな利益へと変える可能性を秘めている。
※記事より抜粋
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-21/T1B8F4GOYMTX00?srnd=cojp-v2
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【コラム】訪日客のお土産は日本の価値観、株高にも寄与
2025年8月21日 13:30 JST
訪日観光客の間で思わぬヒット商品となっているのが、2003年公開の映画「キル・ビル」に登場したスニーカーだ。
アシックスはこのブランドを一時廃止していたが、2000年代前半に復活。新型コロナウイルス禍後に日本を訪れる観光客の間で、履き心地が良く、時代を超えたデザインのスニーカーとして大人気となっている。日本国内での売上高が1年で倍増し、その増加分のほとんどが訪日客によるものだという。
実際に外国人観光客による昨年の消費額は8兆1000億円に達し、アシックスのような企業の利益にもその影響が色濃く表れている。そしてこの傾向は、同社に限った話ではない。
直近の決算期では、米国による関税の影響に注目が集まったが、より注視すべきは、本物の日本らしさを体現したブランドが訪日客に買われ、その傾向が海外市場へも拡大しているという流れだ。
例えば、サンリオの売上高は依然として国内中心だが、今は訪日客による買い物が国内商品売り上げの約40%を占める(これは日本の免税制度により追跡可能なデータだ)。同社の株価は19年の水準から10倍以上に上昇している。
回転寿司チェーン「スシロー」を傘下に置くFOOD & LIFE COMPANIESは、東京など都市部の店舗が観光客でにぎわっており、海外展開も進めている。26年度までに海外店舗数を320店に増やす計画で、5年前はわずか38店だった。中国本土の1号店が昨年開業し、一部では「中トロ」を求めて10時間待ちの行列ができたと報じられている。
ミニマリズム
「いきがい」などの紋切り型の日本らしさに頼るまでもなく、これらの企業には共通点がある。手頃な価格と高品質、そして美的なミニマリズムだ。こうした特性が長年、日本らしさとして消費者の心に響いてきた(中国の名創優品集団など、同じような感覚をまねようとしている外国企業もある)。
この変革の象徴的な存在がファーストリテイリングだ。同社はかつて、デフレに苦しむ日本が安価なファストファッションに頼らざるを得ない姿を映し出しているとされていた。
当時は売り上げの9割が日本国内だった。その後、ユニクロはミニマリズムを体現しつつもアイコン的なブランドへと進化し、22年には海外売上高が国内を上回った。
もちろん、成功する企業全てがミニマル志向である必要はない。全く異なるスタイルで成功しているのが、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが展開しているディスカウントストア「ドン・キホーテ」だ。
日本のソフトパワーの代表格とされるゲーム大手にも触れておきたい。オニツカタイガーのバッグを手にした観光客が、もう一方の手に任天堂やカプコン、セガサミーホールディングスのグッズを持っている光景は珍しくない。
最近では、セガのゲームキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」と米VF傘下のブランド「ティンバーランド」がコラボしたスニーカーが、数分で完売した。
旅のお土産はすぐに忘れられるかもしれない。しかし、こうしたブランドは時を超えて愛される力を持ち、日本のソフトパワーをハードな利益へと変える可能性を秘めている。
※記事より抜粋
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-21/T1B8F4GOYMTX00?srnd=cojp-v2