危機を迎えた韓米関税交渉…米国「サイン」 韓国「不合理」
米国と関税交渉が深刻な膠着状態に陥った。7月末に韓米両国は大きな枠組みで合意したが、具体的な実行案を確定する過程で表れた隔たりを狭められずにいる。これに対し米国は合意の撤回もあると圧力を強めている。
ラトニック米商務長官は11日(現地時間)、CNBC放送に出演し、「日本はすでに契約書に署名した。韓国は関税を出すのか、協定を受け入れるのか、二つに一つ」と説明した。合意不履行時には対米関税が15%から25%にまた戻る可能性を示唆したのだ。
争点は3500億ドル(約51兆円)規模の対米投資パッケージだ。米国は「白紙小切手」投資を要求している。両国の隔たりが最も大きい部分は投資方式と収益配分比率だ。与党によると、ラトニック長官は「米国内に特殊目的法人(SPC)を設立し、ここに3500億ドルを現金で投入するべき」と要求している。現金のような直接投資方式でなく保証や貸出形式の投資を望む韓国政府側と隔たりが埋まらない理由だ。
さらに米国側は3500億ドル投資による収益配分方式も▼投資元金が回収されるまでは米国が10%を、韓国が90%を▼元金回収以降は米国が90%を、韓国が10%をそれぞれ持つ--ことに固執しているという。米国と日本の交渉結果と比較すると、元金回収以前までは韓国の方が良い条件だが、元金回収以後の「1対9」という悪条件は韓国・日本ともに同じだ。4日に米日が作成した貿易合意文によると、日本が出捐した元金を回収するまでは米国と日本が利益を50%ずつ分配するが、元金回収以後は米国が90%、日本が10%をそれぞれ持つという条件だ。韓国は国内総生産(GDP)の20%にのぼる莫大な規模の全額持分投資は難しいという立場だ。元金回収まで配当・利子など保証がないのも問題だ。韓国は「直接現金投資」より保証方式を活用して負担を減らす案を提示したが、米国は頑強な態度を見せている。
金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長も9日、韓国放送記者クラブ討論会で「日本とは外貨準備高も差があり(韓国は)基軸通貨国でもないのに(投資)構造をどのように構成するか問題が多い」とし「根本的に為替市場に及ぼす衝撃を共に悩み、米国が支援できる部分に対する解答を要求している。その問題で膠着状態にある」と説明した。
◆米国、非基軸通貨国の韓国に日本式「白紙小切手」投資圧力
李在明(イ・ジェミョン)大統領は就任100日記者会見で「今後もしばらくは交渉しなければいけない。利益にならないのになぜサインをするのか。少なくとも合理的なサインをするよう努力しなければいけない」とし、米国の要求をそのまま受け入れることはできないという立場を明らかにした。特に「交渉の表面に表れたものは荒っぽく、過激で、不合理で、非常識だ」とし、異例にも強い表現で米国の交渉方式を批判した。
8日に政府実務交渉団がワシントンで米商務省、米通商代表部(USTR)関係者と実務協議をしたが、特に進展なく終わった。すぐに金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官が11日に訪米し、ラトニック長官らと長官級協議に入った。
関税交渉の結果をすでに文書化した日本の事例も韓国政府に大きな圧力となっている。米国は近く日本産自動車関税を15%に引き下げる予定だ。韓国貿易協会のチャン・サンシク国際貿易通商研究院長は「日本が悪い先例を残したのが問題」とし「韓国が合意した3500億ドルは現在4000億ドル水準の韓国の外貨準備高に比べて過度であり、これをそのまま受け入れる場合、通貨危機級の衝撃につながることもある」と懸念を表した。
◆ビザ問題などが重なり交渉さらに複雑に
実際、先月末基準で韓国の外貨準備高は4163億ドルであり、米国が要求する投資金額はその84%水準にのぼる。日本の対米投資規模が外貨準備高(1兆3242億ドル)の41.5%である点を考慮すると、韓国の負担が相対的に大きい。また、日本の純対外金融資産は昨年末基準で3兆6200億ドルであり、韓国(今年4-6月期末1兆302億ドル)の3倍を超える。
米国は敏感な農畜産物分野でも韓国に非関税障壁の解消をまた要求しているという。韓国政府はコメ・牛肉など農畜産物の追加開放はないという立場だが、関税交渉で「果物と野菜類の輸入衛生関連協力強化」を約束していて、検疫手続き改善議論の可能性は残っている。ある通商専門家は「韓国が投資問題を受け入れられないという立場を守れば、米国は自動車関税、農畜産物市場開放など水面下の問題を再び交渉カードとして取り出す可能性がある」と話した。
さらに現代車-LGエナジーソリューションバッテリー工場の韓国人勤労者拘禁事態をきっかけに韓国政府がビザ拡大問題の解決を強く要求し、交渉はさらに複雑になる様相だ。
関税交渉が最終的に終わるまでは国内自動車企業が受ける打撃は大きい。韓国産自動車は現在、米国輸出時に関税25%が課され、日本車の関税が近く15%に下がれば、相対的に価格競争力が落ちる。今回のジョージア拘禁事態について鄭義宣(チョン・ウィソン)現代車グループ会長は11日(現地時間)、米デトロイトで開かれた「オートモーティブコングレス」で「今回の事態にかかわらず、米国市場により多くの寄与をする」とし「米国は現代車グループにとって最も大きくて重要な市場」と強調した。
しかし業界では「関税の不確実性が長期化すれば韓国企業の対米投資拡大計画にも負担になる」という見方が出ている。米国に大規模な投資をする企業の関係者は「最も大きな問題は、投資判断時に重要視していた米国市場の予測可能性と信頼性が崩れたこと」とし「約束をしてもいつでも言葉を覆すという強力な前例を残した」と指摘した。
◆韓国が受け入れがたい条件…激しい対立にも
西江大のホ・ユン国際大学院教授は「韓米交渉で米国はより一層強硬な姿勢を見せる可能性が高く、韓国も米国の要求を受け入れがたく、ハードボールゲームに向かう可能性がある」とし「国民経済的な得失と外交的含意をすべて考慮して折衷点を見つけなければいけない韓国政府のジレンマ」と分析した。
チャン・サンシク院長は「投資執行期間を長期にし、ドルスワップ締結で為替の不安を緩和し、投資分野を韓国主導の領域に狭める案が必要だ」とし「政府の負担を減らす構造に変え、その代わりアラスカエネルギー長期購買や農畜産物市場開放など他の譲歩案をパッケージで提示し、交渉の突破口を模索しなければいけない」と述べた。
危機を迎えた韓米関税交渉…米国「サイン」 韓国「不合理」
米国と関税交渉が深刻な膠着状態に陥った。7月末に韓米両国は大きな枠組みで合意したが、具体的な実行案を確定する過程で表れた隔たりを狭められずにいる。これに対し米国は合意の撤回もあると圧力を強めている。
ラトニック米商務長官は11日(現地時間)、CNBC放送に出演し、「日本はすでに契約書に署名した。韓国は関税を出すのか、協定を受け入れるのか、二つに一つ」と説明した。合意不履行時には対米関税が15%から25%にまた戻る可能性を示唆したのだ。
争点は3500億ドル(約51兆円)規模の対米投資パッケージだ。米国は「白紙小切手」投資を要求している。両国の隔たりが最も大きい部分は投資方式と収益配分比率だ。与党によると、ラトニック長官は「米国内に特殊目的法人(SPC)を設立し、ここに3500億ドルを現金で投入するべき」と要求している。現金のような直接投資方式でなく保証や貸出形式の投資を望む韓国政府側と隔たりが埋まらない理由だ。
さらに米国側は3500億ドル投資による収益配分方式も▼投資元金が回収されるまでは米国が10%を、韓国が90%を▼元金回収以降は米国が90%を、韓国が10%をそれぞれ持つ--ことに固執しているという。米国と日本の交渉結果と比較すると、元金回収以前までは韓国の方が良い条件だが、元金回収以後の「1対9」という悪条件は韓国・日本ともに同じだ。4日に米日が作成した貿易合意文によると、日本が出捐した元金を回収するまでは米国と日本が利益を50%ずつ分配するが、元金回収以後は米国が90%、日本が10%をそれぞれ持つという条件だ。韓国は国内総生産(GDP)の20%にのぼる莫大な規模の全額持分投資は難しいという立場だ。元金回収まで配当・利子など保証がないのも問題だ。韓国は「直接現金投資」より保証方式を活用して負担を減らす案を提示したが、米国は頑強な態度を見せている。
金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長も9日、韓国放送記者クラブ討論会で「日本とは外貨準備高も差があり(韓国は)基軸通貨国でもないのに(投資)構造をどのように構成するか問題が多い」とし「根本的に為替市場に及ぼす衝撃を共に悩み、米国が支援できる部分に対する解答を要求している。その問題で膠着状態にある」と説明した。
◆米国、非基軸通貨国の韓国に日本式「白紙小切手」投資圧力
李在明(イ・ジェミョン)大統領は就任100日記者会見で「今後もしばらくは交渉しなければいけない。利益にならないのになぜサインをするのか。少なくとも合理的なサインをするよう努力しなければいけない」とし、米国の要求をそのまま受け入れることはできないという立場を明らかにした。特に「交渉の表面に表れたものは荒っぽく、過激で、不合理で、非常識だ」とし、異例にも強い表現で米国の交渉方式を批判した。
8日に政府実務交渉団がワシントンで米商務省、米通商代表部(USTR)関係者と実務協議をしたが、特に進展なく終わった。すぐに金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官が11日に訪米し、ラトニック長官らと長官級協議に入った。
関税交渉の結果をすでに文書化した日本の事例も韓国政府に大きな圧力となっている。米国は近く日本産自動車関税を15%に引き下げる予定だ。韓国貿易協会のチャン・サンシク国際貿易通商研究院長は「日本が悪い先例を残したのが問題」とし「韓国が合意した3500億ドルは現在4000億ドル水準の韓国の外貨準備高に比べて過度であり、これをそのまま受け入れる場合、通貨危機級の衝撃につながることもある」と懸念を表した。
◆ビザ問題などが重なり交渉さらに複雑に
実際、先月末基準で韓国の外貨準備高は4163億ドルであり、米国が要求する投資金額はその84%水準にのぼる。日本の対米投資規模が外貨準備高(1兆3242億ドル)の41.5%である点を考慮すると、韓国の負担が相対的に大きい。また、日本の純対外金融資産は昨年末基準で3兆6200億ドルであり、韓国(今年4-6月期末1兆302億ドル)の3倍を超える。
米国は敏感な農畜産物分野でも韓国に非関税障壁の解消をまた要求しているという。韓国政府はコメ・牛肉など農畜産物の追加開放はないという立場だが、関税交渉で「果物と野菜類の輸入衛生関連協力強化」を約束していて、検疫手続き改善議論の可能性は残っている。ある通商専門家は「韓国が投資問題を受け入れられないという立場を守れば、米国は自動車関税、農畜産物市場開放など水面下の問題を再び交渉カードとして取り出す可能性がある」と話した。
さらに現代車-LGエナジーソリューションバッテリー工場の韓国人勤労者拘禁事態をきっかけに韓国政府がビザ拡大問題の解決を強く要求し、交渉はさらに複雑になる様相だ。
関税交渉が最終的に終わるまでは国内自動車企業が受ける打撃は大きい。韓国産自動車は現在、米国輸出時に関税25%が課され、日本車の関税が近く15%に下がれば、相対的に価格競争力が落ちる。今回のジョージア拘禁事態について鄭義宣(チョン・ウィソン)現代車グループ会長は11日(現地時間)、米デトロイトで開かれた「オートモーティブコングレス」で「今回の事態にかかわらず、米国市場により多くの寄与をする」とし「米国は現代車グループにとって最も大きくて重要な市場」と強調した。
しかし業界では「関税の不確実性が長期化すれば韓国企業の対米投資拡大計画にも負担になる」という見方が出ている。米国に大規模な投資をする企業の関係者は「最も大きな問題は、投資判断時に重要視していた米国市場の予測可能性と信頼性が崩れたこと」とし「約束をしてもいつでも言葉を覆すという強力な前例を残した」と指摘した。
◆韓国が受け入れがたい条件…激しい対立にも
西江大のホ・ユン国際大学院教授は「韓米交渉で米国はより一層強硬な姿勢を見せる可能性が高く、韓国も米国の要求を受け入れがたく、ハードボールゲームに向かう可能性がある」とし「国民経済的な得失と外交的含意をすべて考慮して折衷点を見つけなければいけない韓国政府のジレンマ」と分析した。
チャン・サンシク院長は「投資執行期間を長期にし、ドルスワップ締結で為替の不安を緩和し、投資分野を韓国主導の領域に狭める案が必要だ」とし「政府の負担を減らす構造に変え、その代わりアラスカエネルギー長期購買や農畜産物市場開放など他の譲歩案をパッケージで提示し、交渉の突破口を模索しなければいけない」と述べた。