ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは
ロシア・ウクライナ戦争でドイツの最新兵器は役に立っていない──。注目すべき報告が最前線の戦場から届けられたとドイツメディアが詳報している。これは我々日本人にとっても信じがたい報告だろう。何しろドイツの工業製品は極めて品質が高い。世界一故障の少ない“メイド・イン・ジャパン”を当たり前と考える我々はアメ車には強い不信感を抱いていても、ドイツ車なら喜んで購入する。兵器も同じはずだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2025/07230602/?photo=2;title:【写真を見る】“お忍び”でディズニーランドを訪れたプーチン大統領の長女・マリヤ氏…険しい表情で楽しそうには見えない;” index=“31” xss=removed>【写真を見る】“お忍び”でディズニーランドを訪れたプーチン大統領の長女・マリヤ氏…険しい表情で楽しそうには見えない
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一体、ドイツ軍で何が起きたのか、担当記者は「1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演が行われました。ウクライナの首都キーウにあるドイツ大使館の次席武官が壇上に立ったのです」と言う。 「約200人の聴衆を前に武官は戦場の現実を率直に伝え、強い衝撃を与えました。ドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が『戦争に適合していない』と欠陥を強く批判したのです。ドイツ陸軍は講演録を作成し、これを機密扱いとしました。ところが一部のドイツメディアが入手し、高級紙の南ドイツ新聞などがスクープ記事として詳報しました」 武官が問題視した兵器の一つが、PzH2000自走榴弾砲だ。1997年から2002年までに185両が生産された。最新の兵器だけあってGPSを組み込んだ照準システムが装備。砲弾自体もGPSやレーザーなどで誘導され、目標に向かって正確に飛んでいく。 百発百中の“デジタル榴弾砲”と“デジタル砲弾”はウクライナの最前線で大活躍し、ロシア軍に大打撃を与える──はずだった。しかし現実は違った。 軍事ジャーナリストは「私もPzH2000自走榴弾砲がウクライナに供与されたと報道で知った時は、ゲームチェンジャーになり得ると判断しました」と振り返る。
北朝鮮の砲弾が圧倒
「ウクライナの戦場で明らかになったPzH2000自走榴弾砲の欠点を一言で表現するなら、あまりにもハイテクすぎたということになるでしょう。ウクライナ戦争が起きるまで、アメリカもNATO諸国も高性能のデジタル兵器を開発すれば、効率よく短期間で敵軍を撃破できると考えていました。ところがウクライナ戦争で出現した戦場は、塹壕を掘りまくり、ひたすら榴弾砲を撃ちまくったほうが勝つという、第1次世界大戦の西部戦線に非常に似たものです。つまり質より量という戦術が有効なのです。ウクライナ軍がドイツ製の最新デジタル砲弾を一発必中で撃つより、ロシア軍が北朝鮮の安価な砲弾を撃ちまくったほうが強いということが分かったのです」 武官は「最新型のドイツ製兵器は使えない」と酷評しただけではなかった。冷戦下に製造された旧式の兵器が戦場で大活躍していることも報告したのだ。 「ドイツ陸軍も運用している現用戦車レオパルト2−A6と、冷戦下に旧西ドイツが開発したレオパルト1を比較してみましょう。レオパルト2−A6は性能だけを考えれば世界最強レベルの戦車であり、無敵と言っても過言ではありません。デジタル化された高性能の射撃システムに、防御力の高い装甲を備えています。ところがウクライナの戦場は泥濘が少なくないため、約60トンと重いレオパルド2A6は悪路に苦しめられています。何より高性能の戦車なので特殊な部品が多く、ウクライナ軍は整備や修理に手を焼いているのです」(同・軍事ジャーナリスト)
ゲパルト自走対空砲の威力
一方、レオパルト1は少なくともウクライナの戦場には向いているという。重量が40トンと軽いため高速移動が可能であり、燃費も優れている。もちろん高度なデジタル部品など全く使われていないため、整備や修理の負担は非常に少ない。 特にウクライナの戦場で大活躍しているのが1973年に配備が始まったゲパルト自走対空砲だという。
時代遅れの「ゲパルト自走対空砲」がウクライナ戦線で大活躍の真相…最新兵器が最大の成果をもたらすとは限らない「戦艦大和」の教訓
第1回【ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは】からの続き──。ウクライナの首都キーウにあるドイツ大使館の次席武官は今年1月、「ドイツの最新兵器は戦争に適合していない」と講演した。この衝撃的な“暴露”は、全世界の軍事関係者に鋭い問いを投げかけたと言える。(全2回の第2回)
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武官は1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演を行った。そして約200人の聴衆を前にドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が「戦争に適合していない」と率直な口調で批判した。...
武官は1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演を行った。そして約200人の聴衆を前にドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が「戦争に適合していない」と率直な口調で批判した。
ドイツ陸軍は講演録を機密扱いとした。だが一部のドイツメディアが入手してスクープ記事として報道。ドイツ国内だけでなく世界各国でも注目され、議論を呼んでいる。担当記者が言う。
「なぜドイツ製の最新兵器がウクライナ軍の役に立っていないか、それはあまりにもハイテク兵器すぎるからです。例えばドイツ陸軍も運用している現用戦車レオパルト2−A6は文字通りのデジタル戦車で、データだけを見れば世界トップクラスの性能を誇ります。ところが高性能のため整備や修理も手間がかかり、ウクライナ軍は手を焼いています。まして最前線で壊れてしまうと修理は不可能です。さらにドイツ、スウェーデン、イタリアの軍需企業3社が共同開発したIRIS-Tという短距離空対空ミサイルの場合、武官は『効果は発揮している』と性能自体は認めました。しかし高性能ミサイルの価格はあまりに高いため『必要な量を確保できない』という欠点を挙げたのです」
冷戦下の兵器は有能
軍事ジャーナリストは「皮肉なことに、冷戦下の西ドイツで作られた旧型の兵器はウクライナの戦場で大活躍していることも武官は明らかにしました」と言う。
「同じレオパルト戦車でも西ドイツの時代、1965年から製造が始まったレオパルト1は高度なデジタル部品など全く使われていません。そのためウクライナ軍でも整備や修理が可能です。さらに興味深いのは、レオパルト1の車体を流用し、対空砲を乗せたゲパルト自走対空砲が最前線の戦場でロシア軍のドローンを多数、撃墜していることです。ゲパルトは当時の東側諸国が西ヨーロッパに侵攻してきた際、低空で侵入する航空機を撃ち落とすために開発されました。その後、航空機が搭載するミサイルの性能が飛躍的に向上したためゲパルトは時代遅れの兵器となったのですが冷戦下、低空侵入して来る航空機と似た飛び方のドローンが戦場に登場すると再評価されたのです。いわば一周遅れたことでトップに躍り出たランナーのようなものです。ウクライナ軍にとってはゲパルトとレオパルト1は共通する部品が多いため、整備や修理も負担が少ないという利点もあります」
ウクライナ戦争が起きるまで、特に西側の軍事専門家は「兵器のデジタル化を進めれば、効率的に敵軍を撃破できる」と考えていた。だが、それは戦場の現実を無視した“机上の空論”だったのだ。
戦車より強いトヨタ車
「ドイツ製の最新兵器がウクライナ戦争で無力だという事実は『過ぎたるは及ばざるがごとし』という格言を思い出させます。極端にハイテク化した兵器は、泥濘の激戦地には向きません。旧日本海軍も戦艦大和・武蔵という戦艦対戦艦の艦隊決戦では世界一の戦艦を当時の最新技術を注ぎ建造しました。しかし完成時すでに戦場ので主力は空母機動部隊と空母艦載機になっていました。やはり兵器開発、運用においては戦場の実態を見極める先見性と正しく運用するバランスが重要なのです。百発百中のデジタル砲弾でも、絶対量が少なければ意味がありません。現実の戦場ではロシア軍が北朝鮮の安い砲弾をとにかく山のように撃てば、たとえ当たらなくてもウクライナ軍を苦しめることが可能なのです」(同・軍事ジャーナリスト)
日本海海戦で大勝利を収めた東郷平八郎は「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」との言葉を残したが、旧日本海軍の上層部にも「百発一中の砲百門が勝る」と反論していた軍人は少なくなかった。同じことがウクライナの戦場で起きたと言える。
そもそも“兵器”より民生品を上手に活用したほうが強いという戦訓もある。頑丈で壊れず、整備が簡単で、戦場で最も力を発揮する陸戦兵器は戦車ではなく、トヨタのランドクルーザーだという説は根強い。
80年代に起きたアフリカのチャド内戦では政府軍も反政府軍もトヨタ車にバズーカ砲や重機関銃を乗せて“兵器”として使用して戦果を挙げた。そのためチャド内戦は「トヨタ戦争」と呼ばれた。近年ではシリア内戦で同じことが起きている。
整備が大変で燃費が悪く、小回りが利かない戦車より、トヨタ車のほうが戦力になる場合も多いことは世界中の軍事関係者が認めている。
日本が整備すべき兵器とは?
「実はアメリカ軍は兵器の整備計画を白紙に戻しています。ウクライナ戦争の衝撃が影響を与えているのは間違いありません。あまりに極端なハイテク兵器は設計を見直す必要がありますし、ドローンの脅威に対抗する戦術・戦略を構築するまでは兵器の開発をストップするべきでしょう。東アジアでは中国の覇権主義が露骨になっており、自衛隊は対応を迫られています。防衛力の増強は急務ですが、拙速は慎むべきです。ウクライナ戦争から戦訓を学びながら、どんな兵器で日本を守るか熟考すべきでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは
ロシア・ウクライナ戦争でドイツの最新兵器は役に立っていない──。注目すべき報告が最前線の戦場から届けられたとドイツメディアが詳報している。これは我々日本人にとっても信じがたい報告だろう。何しろドイツの工業製品は極めて品質が高い。世界一故障の少ない“メイド・イン・ジャパン”を当たり前と考える我々はアメ車には強い不信感を抱いていても、ドイツ車なら喜んで購入する。兵器も同じはずだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2025/07230602/?photo=2;title:【写真を見る】“お忍び”でディズニーランドを訪れたプーチン大統領の長女・マリヤ氏…険しい表情で楽しそうには見えない;" index="31" xss=removed>【写真を見る】“お忍び”でディズニーランドを訪れたプーチン大統領の長女・マリヤ氏…険しい表情で楽しそうには見えない
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一体、ドイツ軍で何が起きたのか、担当記者は「1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演が行われました。ウクライナの首都キーウにあるドイツ大使館の次席武官が壇上に立ったのです」と言う。 「約200人の聴衆を前に武官は戦場の現実を率直に伝え、強い衝撃を与えました。ドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が『戦争に適合していない』と欠陥を強く批判したのです。ドイツ陸軍は講演録を作成し、これを機密扱いとしました。ところが一部のドイツメディアが入手し、高級紙の南ドイツ新聞などがスクープ記事として詳報しました」 武官が問題視した兵器の一つが、PzH2000自走榴弾砲だ。1997年から2002年までに185両が生産された。最新の兵器だけあってGPSを組み込んだ照準システムが装備。砲弾自体もGPSやレーザーなどで誘導され、目標に向かって正確に飛んでいく。 百発百中の“デジタル榴弾砲”と“デジタル砲弾”はウクライナの最前線で大活躍し、ロシア軍に大打撃を与える──はずだった。しかし現実は違った。 軍事ジャーナリストは「私もPzH2000自走榴弾砲がウクライナに供与されたと報道で知った時は、ゲームチェンジャーになり得ると判断しました」と振り返る。
北朝鮮の砲弾が圧倒
「ウクライナの戦場で明らかになったPzH2000自走榴弾砲の欠点を一言で表現するなら、あまりにもハイテクすぎたということになるでしょう。ウクライナ戦争が起きるまで、アメリカもNATO諸国も高性能のデジタル兵器を開発すれば、効率よく短期間で敵軍を撃破できると考えていました。ところがウクライナ戦争で出現した戦場は、塹壕を掘りまくり、ひたすら榴弾砲を撃ちまくったほうが勝つという、第1次世界大戦の西部戦線に非常に似たものです。つまり質より量という戦術が有効なのです。ウクライナ軍がドイツ製の最新デジタル砲弾を一発必中で撃つより、ロシア軍が北朝鮮の安価な砲弾を撃ちまくったほうが強いということが分かったのです」 武官は「最新型のドイツ製兵器は使えない」と酷評しただけではなかった。冷戦下に製造された旧式の兵器が戦場で大活躍していることも報告したのだ。 「ドイツ陸軍も運用している現用戦車レオパルト2−A6と、冷戦下に旧西ドイツが開発したレオパルト1を比較してみましょう。レオパルト2−A6は性能だけを考えれば世界最強レベルの戦車であり、無敵と言っても過言ではありません。デジタル化された高性能の射撃システムに、防御力の高い装甲を備えています。ところがウクライナの戦場は泥濘が少なくないため、約60トンと重いレオパルド2A6は悪路に苦しめられています。何より高性能の戦車なので特殊な部品が多く、ウクライナ軍は整備や修理に手を焼いているのです」(同・軍事ジャーナリスト)
ゲパルト自走対空砲の威力
一方、レオパルト1は少なくともウクライナの戦場には向いているという。重量が40トンと軽いため高速移動が可能であり、燃費も優れている。もちろん高度なデジタル部品など全く使われていないため、整備や修理の負担は非常に少ない。 特にウクライナの戦場で大活躍しているのが1973年に配備が始まったゲパルト自走対空砲だという。
時代遅れの「ゲパルト自走対空砲」がウクライナ戦線で大活躍の真相…最新兵器が最大の成果をもたらすとは限らない「戦艦大和」の教訓
第1回【ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは】からの続き──。ウクライナの首都キーウにあるドイツ大使館の次席武官は今年1月、「ドイツの最新兵器は戦争に適合していない」と講演した。この衝撃的な“暴露”は、全世界の軍事関係者に鋭い問いを投げかけたと言える。(全2回の第2回)
***
武官は1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演を行った。そして約200人の聴衆を前にドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が「戦争に適合していない」と率直な口調で批判した。...
武官は1月30日、ドイツ陸軍の下士官学校で講演を行った。そして約200人の聴衆を前にドイツが製造し、ウクライナに供与されている8つの最新兵器が「戦争に適合していない」と率直な口調で批判した。
ドイツ陸軍は講演録を機密扱いとした。だが一部のドイツメディアが入手してスクープ記事として報道。ドイツ国内だけでなく世界各国でも注目され、議論を呼んでいる。担当記者が言う。
「なぜドイツ製の最新兵器がウクライナ軍の役に立っていないか、それはあまりにもハイテク兵器すぎるからです。例えばドイツ陸軍も運用している現用戦車レオパルト2−A6は文字通りのデジタル戦車で、データだけを見れば世界トップクラスの性能を誇ります。ところが高性能のため整備や修理も手間がかかり、ウクライナ軍は手を焼いています。まして最前線で壊れてしまうと修理は不可能です。さらにドイツ、スウェーデン、イタリアの軍需企業3社が共同開発したIRIS-Tという短距離空対空ミサイルの場合、武官は『効果は発揮している』と性能自体は認めました。しかし高性能ミサイルの価格はあまりに高いため『必要な量を確保できない』という欠点を挙げたのです」
冷戦下の兵器は有能
軍事ジャーナリストは「皮肉なことに、冷戦下の西ドイツで作られた旧型の兵器はウクライナの戦場で大活躍していることも武官は明らかにしました」と言う。
「同じレオパルト戦車でも西ドイツの時代、1965年から製造が始まったレオパルト1は高度なデジタル部品など全く使われていません。そのためウクライナ軍でも整備や修理が可能です。さらに興味深いのは、レオパルト1の車体を流用し、対空砲を乗せたゲパルト自走対空砲が最前線の戦場でロシア軍のドローンを多数、撃墜していることです。ゲパルトは当時の東側諸国が西ヨーロッパに侵攻してきた際、低空で侵入する航空機を撃ち落とすために開発されました。その後、航空機が搭載するミサイルの性能が飛躍的に向上したためゲパルトは時代遅れの兵器となったのですが冷戦下、低空侵入して来る航空機と似た飛び方のドローンが戦場に登場すると再評価されたのです。いわば一周遅れたことでトップに躍り出たランナーのようなものです。ウクライナ軍にとってはゲパルトとレオパルト1は共通する部品が多いため、整備や修理も負担が少ないという利点もあります」
ウクライナ戦争が起きるまで、特に西側の軍事専門家は「兵器のデジタル化を進めれば、効率的に敵軍を撃破できる」と考えていた。だが、それは戦場の現実を無視した“机上の空論”だったのだ。
戦車より強いトヨタ車
「ドイツ製の最新兵器がウクライナ戦争で無力だという事実は『過ぎたるは及ばざるがごとし』という格言を思い出させます。極端にハイテク化した兵器は、泥濘の激戦地には向きません。旧日本海軍も戦艦大和・武蔵という戦艦対戦艦の艦隊決戦では世界一の戦艦を当時の最新技術を注ぎ建造しました。しかし完成時すでに戦場ので主力は空母機動部隊と空母艦載機になっていました。やはり兵器開発、運用においては戦場の実態を見極める先見性と正しく運用するバランスが重要なのです。百発百中のデジタル砲弾でも、絶対量が少なければ意味がありません。現実の戦場ではロシア軍が北朝鮮の安い砲弾をとにかく山のように撃てば、たとえ当たらなくてもウクライナ軍を苦しめることが可能なのです」(同・軍事ジャーナリスト)
日本海海戦で大勝利を収めた東郷平八郎は「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」との言葉を残したが、旧日本海軍の上層部にも「百発一中の砲百門が勝る」と反論していた軍人は少なくなかった。同じことがウクライナの戦場で起きたと言える。
そもそも“兵器”より民生品を上手に活用したほうが強いという戦訓もある。頑丈で壊れず、整備が簡単で、戦場で最も力を発揮する陸戦兵器は戦車ではなく、トヨタのランドクルーザーだという説は根強い。
80年代に起きたアフリカのチャド内戦では政府軍も反政府軍もトヨタ車にバズーカ砲や重機関銃を乗せて“兵器”として使用して戦果を挙げた。そのためチャド内戦は「トヨタ戦争」と呼ばれた。近年ではシリア内戦で同じことが起きている。
整備が大変で燃費が悪く、小回りが利かない戦車より、トヨタ車のほうが戦力になる場合も多いことは世界中の軍事関係者が認めている。
日本が整備すべき兵器とは?
「実はアメリカ軍は兵器の整備計画を白紙に戻しています。ウクライナ戦争の衝撃が影響を与えているのは間違いありません。あまりに極端なハイテク兵器は設計を見直す必要がありますし、ドローンの脅威に対抗する戦術・戦略を構築するまでは兵器の開発をストップするべきでしょう。東アジアでは中国の覇権主義が露骨になっており、自衛隊は対応を迫られています。防衛力の増強は急務ですが、拙速は慎むべきです。ウクライナ戦争から戦訓を学びながら、どんな兵器で日本を守るか熟考すべきでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)


