
写真 川崎重工業が開発した電池で走る路面電車「SWIMO」
環境にとっても優しい路面電車が実現間近だ。川崎重工業が開発した大容量蓄電池だけで走る路面電車「SWIMO」だ。架線がない場所でも10キロ以上走行でき、停止時に発生するエネルギーを有効利用することで、従来の路面電車に比べ、使用電力を3割削減できる。そのパワーは、高速充放電が可能な大容量ニッケル水素電池「ギガセル」が生み出した。
充電可能なニッケル水素電池は、三洋電機が2005年に発売した充電池「エネループ」のような円筒型が主流だった。しかし、円筒型では電池の性能が低下する熱への対策が難しく、大容量化に限界があった。
このため、川崎重工では正極板と負極板を折り重ねるような形で板状の単セル(電池の一群)を開発。この単セル同士の間に放熱板を挟み、内部に装着した冷却ファンで空気を送り、大容量化の際の最大の弱点、放熱の問題を解消した。大きさも最大で長さ1287ミリにとどまり、路面電車の座席にすっぽりと収まるサイズにできた。
ギガセルは当初、風力や太陽光発電など天候に左右される不安定な電力網を補助する電池として開発された。ところが、瞬間的に発生した大量の電気を一気に充電し、必要な時に一気に放電できる特徴があり、路面電車などにも最適だった。ブレーキの際に生じるエネルギー(回生ブレーキ)を蓄電して必要な時に利用できるためだ。
2007年11月に大阪市営地下鉄谷町線で行った実証実験では、ブレーキ時に発生する大容量の電気を貯めて利用することで、使用電力を2割程度削減できることが判明。回生ブレーキを多用することで、摩擦ブレーキの使用頻度が減り、メンテナンス費用も減らせる効果があることもわかった。
ギガセルは頻繁に充放電を繰り返す地下鉄などでも、7年間の使用が可能。使用電力が2割程度削減できれば、国の補助制度も利用することで、7年程度で投資費用を回収できるという。このほか、バスや大型クレーンといった産業用機器などでも回生ブレーキの回収実験を実施。港湾でコンテナの上げ下ろしをする大型クレーンでは、40~50%もの省エネ効果があった。
ギガセルを搭載したSWIMOは、07年12月から08年3月まで、札幌市の路面電車で実証実験を実施。零下10度の屋外で一晩置いた後でも、ギガセルの電力だけで一発起動し、悪条件下でも十分に利用できることが証明された。
省エネ効果が高く架線がない場所でも走れるSWIMOは海外からも注目されている。川崎重工車両カンパニーの宮本裕一ギガセル電池センター長は「最大のライバルは安い鉛蓄電池だが、ギガセルのメリットをアピールし、将来的には家庭の蓄電池用などとしても大々的に売り出したい」と意気込んでいる。
産経新聞 http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100321/biz1003211802006-n1.htm