
Vol.19 カスカイス
スペインのイルンを発車した夜行列車は、ホテルのように快適だった。そして翌朝、ポルトガルに入国。昼前にリスボンに到着した。
ユーラシア大陸最西端の駅。それはリスボンではない。
そこから西に電車で少し揺られた先にあるカスカイスという駅だった。2万キロを超える列車の旅を考えれば、残りは短い。リスボンの街から乗った電車は、僕らの思いなど関係なく、淡々と西に向かって進んでいった。リスボンの郊外電車の趣である。大学生らしき若者や、買い物帰りの主婦が次々に乗ってくる。
「旅も終わりだ」と、なにかカウントダウンのような心境で乗り込んだのだが、あまりに平凡な日々を乗せた電車に、落としどころがみつからず、やっぱり窓の外をぼんやり見つめていた。

列車の終点のひとつ手前、リスボンのオリエンテ駅で降りた。この駅のほうが、リスボン市内を走る地下鉄との接続がよかったのだ。10月末のリスボン。秋の穏やかな日差しが街を包んでいた。大きく深呼吸をひとつ。やっとリスボンについた……。

人に聞き、地下鉄の切符を買ったのだが、これがなんだかとても難しい。乗り換えようとしても、改札を通ることができない。チャージもできない。長距離切符はこれまで何枚買ったかわからないが、まさか地下鉄切符で悩むとは。最後までよくわからなかった。



ケーブルカーは、2台が登りと下りを運行する単純な構造。単線だが、中央あたりで複線になってすれ違う。スピードは遅く、歩く人よりちょっと速い程度。もちろん坂道を歩く人もいる。ケーブルカーは人と共存しながら、リスボンの街を走っている。

1755年、リスボンは大地震と津波に襲われた。犠牲者は6万人を超えたといわれる。そこには、1万人を超える津波による死者も含まれていた。そんなことを思いながら、家々が密集するリスボンを眺めていた。東日本大震災が起きたのは、この5カ月半後のことだった。

リスボンの広場には生活感のない人々が集まる。差別の少ない街でもある。「この仲よし感がだめなんだ」と批判する若者もいる。物価も安い。欧州連合(EU)のなかにも、こういう国があってもいいんじゃない。のんきな旅人はそんなことを考えてしまう。

大きな広場には、決まってカフェがあるリスボン。その裏には、古びた酒屋や雑貨屋が続いている。旅の最後になった大きな街は、古きよきヨーロッパがしっかりと残っている。散歩好きにはたまらない街。僕もしっかり歩いてしまいました。

タコを平気で食べることができるのもポルトガル。優しい味付けの料理は、魚介類大好き日本人にはしっくりとくる。ここなら暮らすことができそうな気になってくる。面倒なチップさえなければ……。

リスボン市内のカイス・ド・ソドレ駅から、カスカイス行きの電車に乗った。これが最後の列車という思いで乗り込んだが、その気勢を削(そ)ぐような、ただの郊外行き電車。もうちょっと雰囲気を盛りあげたかったが、これじゃあ……。

カスカイス駅に到着した。終着駅だが、郊外電車のそれだから、駅もホームも簡素なものだった。駅前がバスターミナルになっていて、ユーラシア大陸最西端のロカ岬行きのバスもここから出ていた。でも、僕らの旅はここで終わり。先に線路がありませんから。

カスカイス駅の経度は西経9度25分。シベリアのワニノ駅が東経140度16分。経度にして150度近くを列車で走ったことになる。その距離は2万1000キロを超えた。駅舎に駅名表示もないので、この1枚。最後の駅はこんなもんでした。

シベリアのソヴィエツカヤ・ガバニ駅から列車に乗り、車中に26泊、列車の乗り換え27回。もう飽きるほど列車に揺られ、たどり着いたカスカイス駅で一応、このポーズ。笑顔のなかに、列車疲れがにじんでいる?

カスカイスの街は、海辺のリゾートの雰囲気に包まれていた。リスボン市民は、ちょっと気晴らしに、大西洋に面したこの街にやってくるらしい。遠くシベリアからの列車旅を、ゆっくり振り返ろうと、海辺のテラスをめざす。

海に面したレストランで、ポルトガル名物のイワシの塩焼きと、ビールで乾杯。さまざまなトラブルが続いた旅だった。車両区の片隅に車両ごと置き去りにされたり、爆破テロに遭ったり、ビザ切れ潜伏を余儀なくされたり……。長い旅だった。

カスカイスの海には、さほど広くない浜辺と小さな港があった。カモメが低空で舞っている。そういえば、サハリンで泊まった間宮海峡を望むホテルは「カモメホテル」といった。あれから4カ月。長い旅だった。
※写真は2010年10月27日~28日の取材で撮影したものです
※各国の現在の情勢については、外務省の海外安全ホームページなどでご確認ください

(更新日:2011年10月28日)
http://doraku.asahi.com/earth/clickdeep/111028.html
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リスボンのは路面電車かと思ったらケーブルカーなのね。
3本レールがある様に見える内側の1本にケーブルが隠されてるのかしら。
( ´・ω・)
ポルトガルの街は落書きが酷いね。
治安も悪いんだろうか。
( ´・д・)
1755年のリスボン大震災って凄い被害だったのね。
ポルトガルの政治・経済のみならず、
ヨーロッパの社会や哲学にまで影響を与えるほどに。
果たして今年の東日本大震災で、
日本の政治は・・・変わるんだろうか。
( ´-ω-)
~ 以上 ~
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