
Vol.8 台湾(1)
各駅停車で台湾一周の旅に出ることにした。台北駅の「台鐡本舗」という鉄道グッズを売る店で、時刻表を手に入れた。接続を調べながら、台湾一周のルートを調べてみる。ネックは花蓮―台東間ということがわかってくる。この区間には、各駅停車にあたる区間車がすでに走っていない。現在は、1 クラス上の普快車だけなのだが、それでも1日1本から2本。花蓮から台東まで乗り換えなしで行くには時計回りしかなかった。

台北駅の1階。切符売り場のフロアに「台鐡本舗」がある。時刻表以外にも、鉄道関係のガイド、グッズ、置物など、台湾鉄道関連品がすべてそろう。鉄道ファンなら足が震えるような店? 時間帯にもよるが、台湾の駅弁も販売している。

台北駅の乗車ホームにはこんな表示が出る。左から、行き先、列車の種類、発車時刻、遅れ具合の順。そんな説明を受けなくても、日本人ならすぐにわかる? 失礼しました。これから先、鉄道の表示でわからないことはなかった。運行もスケジュール通りだった。

夜の9時35分に台北駅を出発した各駅停車は、山手線のようなロングシート。通勤・通学用だった。しかしそこから2時間半近くも走り続け、終点の蘇澳(すおう)に着いたときは、午前零時をまわっていた。ここで降りた乗客は数人。さて、宿はあるだろうか。

台湾の強い味方は「ご休息」もできるホテル。その区別が日本より少し曖昧(あいまい)で助かる。で、駅前の路地で簡単に見つかった宿。部屋にはテレビが2台ではなく、古くて壊れたテレビをテレビ台にしているという、こういう宿ならではの情緒。

蘇澳の先にあった蘇澳南方の港。いまは漁港にすぎないが、戦前は高雄、基隆に次ぐ港だったという。沖縄(琉球)からの船はこの港に着くことが多かった。港の周りには琉球町もあった。終戦からしばらくの間、日本への密輸基地としてにぎわったという。

蘇澳の駅前で台湾式朝食。乾めんと魯肉飯(ルーローハン)。それぞれ25元、約70円。添えられたたくあんが、台湾に根付いた日本の文化を伝えている。これから2日間、台湾の東海岸を南下する。その鉄道の背後には、戦前の日本が見え隠れするのだった。

蘇澳から5分だけの区間車に乗り新蘇澳へ。ここで花蓮行きの区間車に乗り換えた。待合室に雑誌が置いてあり、そこに2年前の「女性自身」が3冊。日本人が駅員に渡したのか、日本の雑誌を読んだ台湾人が寄付したのか……。ここでも日本に出合ってしまった。

花蓮行きの区間車は最初からすいていた。ロングシート席がやや興ざめだが。列車はやがて海に沿って走りはじめた。乗客が窓に近寄ってシャッターを押す。彼女はひょっとしたら、台湾の鉄子? しっかり時刻表をチェックし、車内も撮影していた。

花蓮駅に着いた。台東までの通し列車は1日1本、17時38分に花蓮を出発し、21時38分に台東に着く列車だけ。その切符を買おうと改札に並んだが、ちゃんと日本語表示まである駅だった。これならなにも困らない?

台湾を植民地とした日本は、花蓮から玉里(当時は璞石閣[ポシコ]と呼ばれた)までの鉄道建設を計画。軽便鉄道だったが、実際に鉄道が敷設された。それがいまの台東線の基礎になっている。花蓮には当時の日本人が勤務した鉄道事務所や旧花蓮駅も保存されている。

花蓮で名物の魚といったらマンボウだとか。淡泊な味付けの台湾風の炒(いた)め方が、ぷりっとしたマンボウの白身を引き立たせていた。花蓮港の入り口にある「遊師父」という店。なんとなく店の名前が気に入って入った。

花蓮発台東行きの列車。普快車だが、座席はボックスになる。冷房もないから、各自が窓を開ける。各駅停車の旅はこれでなくちゃいけない……とひとりうなずいていた。列車は帰宅する高校生でほぼ満席。これに乗り遅れたら、今日の列車はない。

花蓮から台東の間には無人駅も増えている。停車する列車が1日2本か3本といった駅では仕方ないことなのか。駅員がいなくなった駅舎には落書きが増える。そこを通る高校生の笑い声が響く。きっとこれが台湾の現実なんだろう。

花蓮駅から南は、肌の色が違う台湾人が増えてくる。マレーシア人やインドネシア人を思わせる褐色の肌。原住民と呼ばれる人々だ。列車で通学する学生たちも半数近くが原住民系だった。そんな世界を台東行きの列車はとことこと南下していく。

学生たちもひと駅ごとに降り、乗客が減っていく。陽も落ち、車窓に広がる山々も黒さを増す。さっと通り過ぎる街灯。無人駅の灯(あか)りがなまめかしく光る。台東行きの列車は、しだいに夜汽車の空気をまといはじめていた。台東着は午後9時をまわる。

台東市街で遅い夕食。この店は24時間営業。働いているのはベトナム人女性だった。ビールは近所のコンビニで買ってくる。これが台湾の大衆店のスタイルだ。この店のすぐ近くに旧台東駅があった。ここからいまの台東駅に移って数年。しかし市街地は旧駅近くのままだ。
================================
Vol.9 台湾(2)
各駅停車で台湾一周の旅の後半──。前回は台北から時計まわりで花蓮を経て台東までを紹介した。旅は台東からさらに南下。台湾鉄道の最南端駅を境に、北上の旅になる。東海岸に比べれば平地も広く、一気に中国色が強くなる。家や工場も多い。列車も電化された車両に変わっていった。そんな各駅停車、区間車に揺られて、高雄、台南と台北に向かって北上していく。

台東を出発してしばらく進むと、ほとんど平地がなくなる。西側から山が迫り、東側には車窓全体に海が広がる。そう、こういう景色が見たかった。列車はいくつものトンネルをくぐり、南下していく。途中駅での乗降客も数えるほどだった。

台東行きの普快車と待ち合わせ。この路線は特急列車がメーンで、遅い列車は数えるほど。たまたま土曜日ということもあるのか、こちらの列車も、普快車もがら空き状態。少年が窓を開け、僕に向かって愛嬌(あいきょう)をふりまく。ローカル線の旅だなあ。

少し空が広くなってきた。と思っていたら、台湾の鉄道の最南端、枋山(ほうざん)駅に停車した。駅周辺の木々の濃さが最南端の雰囲気を醸し出す。列車はここから台湾の西海岸に入っていく。乗り降りする客はひとりもいなかった。

乗ったのは台東発枋寮(ぼうりょう)行きだった。ここで高雄行きに乗り換える。駅舎を出るとロータリーに先に海が見える小さな町だった。しかし町を飾る看板が急に増える。人の密度が高くなってきたことを教えられる。東海岸から離れたことを教えられた。

枋寮の駅舎には、蒋介石の像とハト。「ん?」と思って近づくとつくり物だった。しかしけっこう凝ったつくりに、立ち止まってしまった。枋寮の町には、海に沿って昔ながらの家並みも残っている。東京近郊でいったら湘南? そんなわけないか。

高雄行きの区間車は特急車両だった。冷房がぎんぎんに効き、窓も開かない。屏東(へいとう)や高雄に行く若者が次々に乗り込んでくる。華やいだ車内に、つい体を小さくしてしまう。なんだか台湾の表世界に入ったような気になった。

水害の爪痕(つめあと)はいたるところに残っている。東海岸でも川の護岸工事や新しい道路建設が盛んに行われていた。この鉄橋は放置され、新たに架けられた鉄橋をいま列車は渡っていく。台湾で鉄道を維持していくことは、なかなか大変なんですな。

高雄駅に駅弁専用売店があった。さっそく「鐵路便當」。ちゃんと温めて売ってくれる。「鐵路便當」が70元、約210円。写真上の弁当が100元、約300円。ご飯ぎっしりのボリューム弁当で、食べ終わった後で、少し後悔してしまうカロリーです。

高雄駅からの区間車はロングシートの電車になった。なんだか興ざめだが、西海岸エリアの発展ぶりからみれば当然のことに思えてくる。しかし台湾の区間車はかなりの長時間運行だ。僕らもこの電車に2時間乗って嘉義(かぎ)、さらに1時間乗って彰化(しょうか)に着いた。

彰化からバスに20分ほど乗って鹿港(ろっこう)に行ってみることにした。ここは明から清の時代にかけ、大陸から台湾に渡った中国人がつくった街。市内には当時の面影が残されている。この九曲巷もそのひとつ。砂を含んだ風を防ぐ知恵とか。本当にくねくねです。

食の台湾……と、うなってしまう鹿港の総菜屋さん。弁当でも、皿に盛ってもらって屋台に運んでもらってもいい応用力も台湾です。海に近いだけに魚介類も豊富。こういう店を無視して歩くことができる人って、かなりの精神力がある人だと思うんですが……。

鹿港名物といったらシャコ(手前)とカキ。どちらもさっと空揚げにしてもらうと、限りなくビールが進んでしまうという困った料理。天后宮あたりに専門の店が集まる。「シャコおいしいよ」。それが日本語だったりするのが、台湾のすごさです。

「鹿港古蹟保存区」は、昼間、観光客がいっぱい。古い建物の多くは土産物屋になっている。行くならやはり夜。台湾人が夕飯を食べている時間に訪ねると、こんな静かな街並みが戻ってくる。ついたたずんでしまう街並みがずっと続く。

台湾はコンビニ天国。街なかのコンビニ密度は日本の比ではない。当然、コンビニは駅にも進出していて、列車の乗客の強い味方になっている。翌朝戻った彰化駅にもセブン-イレブン。つい入ってしまう。日本風の菓子類もよりどりみどり。

彰化から新竹(しんちく)に北上。台湾一周の旅も終わりに近い。新竹一帯は台湾有数の工場地帯。アジアからの出稼ぎ労働者も多い。駅の看板のタイ語やベトナム語がその多さを教えてくれる。アジア内の人の移動は激しい。台湾はその動きのなかにいる。

最後に新竹から台北まで乗った区間車はもう通勤電車だった。日曜日だから、台北に買い物や遊びにいく若者が多かった。3泊4日の台湾一周、ローカル列車旅の終わりは、そんな若者に紛れるようにして台北へ。運賃は総額1201元、約3500円だった。
Vol.8 台湾(1)
http://doraku.asahi.com/earth/clickdeep/100817.html
Vol.9 台湾(2)
http://doraku.asahi.com/earth/clickdeep/100906.html
================================

================================
美味しそうな物がいっぱいあるのね。
( ´・,д,・) ジュル…
駅弁が安いのは羨ましいなぁ。
駅弁なんて何年も食ってないや。
( ´・д・)
~ 以上 ~
