民家、と言うより地方農家の方が主体なんだけど。一生懸命首都中心部を出してこられてもね。中心部が綺麗なのはさすがに世界中どこでもそうでしょう。部分を見せても全体は見えないんだけどなぁ。あ、そういえばどこからが穴蔵（臨時居所）で、どこからが住居なのかは知りたい。今日のは穴蔵かい？

　農家の広さ、というのは実は嘘に近い。農家というものは居宅だけでなく、耕作地全体とその周囲、例えば里山の生産力までを見なければいけない。そういう点で、今回のお話しは極めて部分抽出。
　また日本の農家と半島の農家の性格の違いは極めて大きい。根元的な事を言えば農繁期に主として穀物（米、じゃないところが肝）や蔬菜を生産し、農閑期には農地や山間の補修維持管理をしつつ商業産品を生産する、という点ではある程度類似しているんだけど、農繁期農閑期両方のの生産量が段違い。加えて半島では商業経済が未発達だから自給自足に近い生産が主体だけど、日本の場合現金収入の主体であり、金肥や農具の購入費や寺子屋代金、伊勢参りの積み立てや頼母子講と言った蓄財にもあてられる。
　都市近郊の庄屋層にもなると農業生産以上に都市への蔬菜・調味料生産販売や肥の回収、そして人馬の供給（幕末に非常に多い）と言った武家との交渉役でもあった。地方では絹綿の生産、藍や紅花生産を主体として豪農も数多く生む。この辺は半島では両班層が担っているはずなんだだけど、非常に貧弱。
　耕地から簒奪するだけの農民、そこから搾取するだけの両班、と言う構図ばかりが多く語られ、農具の向上や河川改修、農地開拓なんていう話はほとんど聞かない。むしろ青IDにそういう話を聞きたいくらい。日本ではごく普通にごろごろしている話だけどね。

　とまれ、今回は農家の居宅の大きさの話。いいテキストがないんでこんなもんかなぁというレベルでリトルワールドの建築を取り上げてみる。

　リトルワールドは世界の伝統建築を集めて移築して開園に15年もかかった野外型民族学博物館。建築物は30強（パオなどの移動型テント含む）。
　この中に日本（山形・石垣島・アイヌ）と韓国（慶尚北道２）の移築住居がある。まず見てみてみよう。




慶尚北道の山村に1920年代に建てられた家。母屋は鍵の手型に造られている大規模な農家。




慶尚北道の山村に1937に建てられた家。両班の家。




出羽山地の月山山麓にあった農家で、江戸中期（1767年）築。当初は4室、明治中期に、中門（玄関部分）、座敷、縁側、2階などが増築され、多層型の養蚕農家となる。


この３棟はおなじゾーンにあり、マップから概ねの大きさも比較できる。模式図なので完全に同縮尺では無かろうけど、まぁこんなもんだ、と言う事で。

　日本の農家は自作農だろうけど、大農・豪農というレベルではない。近代に二階屋に改造して養蚕をやるくらいだから、まぁまぁの家というレベルかな。慶尚北道の農家は大規模、と説明があるけど総督府資料他とつきあわせると中の上、と言うところだと思う。両班の家も中流くらいかな。イメージ的には大農の家に近い。
　写真を載せたのは人間を大きさ比較の基準にするため。純粋に一戸の木造建築の大きさという点では圧倒的に日本の方が大きい。材料の確保、という点ももちろんあるけど、この辺はむしろ建築思想の違いと経済力の違いと考えるべき。

　日本の場合、こうした中農層から街道筋での商売（宿や馬喰）に手を染める、米穀の運送から運輸業（舟運）を営む、みそ醤油酒の類の生産から大規模手工場を持つ、絹綿から織物の生産を一手に回す、等々で前述した様な「商人や地域の顔役としての豪農」を生む。と言ってもその多くは近世末から近代にかけて大型化していくと考えた方がいいんだけどね。

　
　おまけ。日本最大級の豪農の家。15番地が本宅（神社は一応除いてもOK）、16番地までが敷地。まぁ、こんなもんです。比較用に同縮尺の著名な建築（部分）もつけといた。




　なぞなぞの答え合わせは次回、完結編で。